子ども・ベビー用品の専門店「西松屋」を全国展開する西松屋チェーン。2021年2月期(単独)業績予想で、純利益が42億円と従来予想の29億円から14億円近く上積みし、前期比約4倍となる見込みと上方修正した。
足元の既存店売上高もコロナ禍の中で前年超えを続けている。
広告費など抑えられ利益上向く
西松屋は1956年兵庫県姫路市で創業。今も本社を姫路市に置いている。子ども・ベビー用品の専門チェーン店としては国内最大手。路面店やショッピングセンターなど主に郊外に店舗が多く、6月の国内店舗数は1012に及ぶ。例えば同じ関西発祥の「アカチャンホンポ(赤ちゃん本舗)」の国内店舗数が6月時点で118であることを思えば、圧倒的な販売力を持つと言えよう。ただ、少子化が進む中で衣類に関しては「ユニクロ」「しまむら」をはじめとする専門チェーンではない勢力との厳しい競争にさらされている側面もある。
では上方修正の内容を確認しておこう。売上高は1520億円と従来予想より20億円増えて前期比6.3%増を見込んだ。営業利益は従来より20億円余り増えて67億円と前期比3倍超。経常利益は従来より20億円増の70億円で前期比約3倍と予想した。修正に踏み込んだ理由は、同日発表した第1四半期(2020年2月21日~5月20日)の業績が改善したことにある。コロナの影響が直撃する期間にもかかわらず売上高が前年同期比8.5%増の407億円、純利益は44.5%増の24億円と増収増益を果たした。粉ミルクや紙おむつなどの消耗品や衛生雑貨、マタニティ、新生児衣料、玩具など全般的に販売が好調に推移。気温の上昇とともに夏物衣料の販売が伸びたことも貢献した。
「巣ごもり」期間に子どもたちが室内で遊ぶ玩具もよく売れた。広告など販売費・一般管理費が抑制されたことで利益が上向いた。各月20日締めの月次既存店売上高は3月が前年同期比21.3%増、4月が2.1%増、5月が8.8%増とプラスをキープした。
これまでは苦戦が続いていたが...
6月19日の株価は取引時間中に前日終値比15.4%(150円)高と値幅制限の上限(ストップ高水準)に急伸して約1年8カ月ぶりの高値をつけ、そのまま取引を終えてこれが終値となった。当日安値が前日高値を100円近く上回る大きな「窓を開ける」チャート図を描くことにもなった。
さらに、6月22日に発表された6月の既存店売上高が33.8%増と急増。学校再開や気温上昇で夏物衣料が「きわめて好調」(西松屋)に推移した。翌23日に株価は一時、前日終値比10.5%(118円)高の1238円まで上値を追った。ただこれをピークに、7月1日時点では1062円まで下げている。
西松屋は衣類におけるユニクロなどとの価格競争もあって、2020年2月期まで3期連続営業減益と、どちらかと言えば苦戦が続いていた。中小の子ども服チェーンの中には経営破綻する社も出る状況でもあったが、足元で価格競争は鎮静化し、西松屋にとっては利益が出るようになっている。また、郊外店が多いことにより、コロナによる一時的な閉店も40店程度と全体の4%ほどにとどまった。さらにはかつて「ガラガラ店舗」と揶揄された、比較的広いスペースに店員が少ない店の特徴が、「社会的距離」をとれるとして人々の買い物を促しているようだ。