Jリーグ(J2・J3)が新型コロナウイルスの影響による中断期間を経て、2020年6月27日に新たなスタートを切った。
各クラブは7月10日からスタジアムに観客を入れての試合開催が可能となるが、それまでは無観客試合(通称:リモートマッチ)の開催を求められる。そんな中、J2・ヴァンフォーレ甲府のホームゲームで見られたスタジアムの光景が、サッカーファンの間で話題になっている。
「これがリモートマッチの新しい形か」
注目を浴びたのは、6月27日に山梨県甲府市の山梨中銀スタジアムで行われたヴァンフォーレ甲府対アルビレックス新潟戦の様子だ。スタンドに観客を入れられない「リモートマッチ」となる中、サポーターたちはスポーツライブ配信サービス「DAZN」などを通じて試合の様子を見届けていた。
そんな中、サポーターたちの目に留まったものがある。無人なはずのスタンドをびっしりと埋め尽くした、色とりどりの「幕」だ。しかし、一般的な試合で見られるような、クラブや所属選手を応援する幕ではない。リモートマッチでのファン・サポーターによる横断幕の掲出は禁止されているからだ。
目を凝らして幕を見ると「山梨トヨペット」「アーク甲府店」のように、地元山梨にある企業や店舗とみられる名前が書かれている。そう、スタンドを埋め尽くしていたのは、企業による「広告幕」だったのだ。
このスタンドの様子を目にしたツイッター上のサッカーファンからは、
「あんなふうに(広告が)並ぶと壮観」
「これがリモートマッチの新しい形か」
と反響が続出した。
「広告露出をどうやって上げられるかを考えた」
J-CASTニュースは6月30日にヴァンフォーレ甲府の営業担当者に取材した。今回の「スタンドへの広告掲出」を実施した背景について、担当者は「リモートマッチでスタンドにお客さんが入れないような状況で、協賛していただいているスポンサーさんの広告露出をどうやって上げられるかを考えた」と話す。
ヴァンフォーレ甲府の普段のホームゲームでは、メインスタンドやゴール裏のスタンド、コンコースに企業の広告幕を掲出している。しかし、無観客試合では、普段通りに広告を掲出しても、その効果が薄れてしまう。そこで、これらの幕を中継映像に映りやすいようバックスタンドに集約。その数は130枚にのぼった。
これらの広告については「リモートマッチだからといって協賛をいただいたわけではなく、今年協賛いただいている企業の広告を掲出している」とする。
ヴァンフォーレ甲府は19年1月期まで18期連続で経常黒字を記録するなど、J屈指の堅実経営クラブとして知られる。その要因となっているのが地元企業を中心とした広告収入で、これまでもスタジアム内に設置された大量の広告看板がサッカーファンの間で話題を呼んできた。
しかし、20年1月期のクラブ決算はJリーグからの分配金減少の影響もあり赤字に。そこに今回のコロナ禍が直撃し、クラブだけでなくスポンサーである地元企業にも経済的な影響を与えている。担当者は「以前からスポンサー様にはずっとお世話になっている」とスポンサーへの感謝を口にしつつ、
「テレビを通じてクラブを応援していただける方にスポンサー様の広告を少しでも見ていただきたい、という思いで掲出させていただいた」
と語った。
「有観客」の次戦はどうする?
Jリーグでは7月4日からJ1も開幕し、10日以降にはスタジアムに観客を入れた試合の開催が可能となる。山梨中銀スタジアムで行われる次回のヴァンフォーレ甲府主催試合は11日のツエーゲン金沢戦になるが、本来の収容人数1万7000人のところ、収容人数3000人での開催を予定している。
担当者によれば、11日の試合では今回のリモートマッチのようなバックスタンドへの広告幕集約は行わず、従来通りスタジアムの各所に幕を掲出する予定だという。
担当者は「まだまだ制限された中での試合になる。一日でも早く普段通りの試合ができるようになり、たくさんのお客さんにきていただけることを期待している」と語った。