プロ野球では昨オフ、美馬学投手(33)、鈴木大地内野手(30)、福田秀平外野手(31)の3人の選手がフリーエージェント(FA)権を行使して国内球団に移籍した。「ランクB」の美馬、鈴木の移籍には人的補償が伴い、楽天、ロッテからそれぞれ選手が移籍。一昨年の長野久義外野手(35)、内海哲也投手(38)らの人的補償による移籍は球界を揺るがしたが、人的補償で移籍した選手は移籍後どのような成績を残したのか。その後を追ってみた。
小野はプロ入り初勝利、酒居は移籍後初勝利
昨オフは、美馬の人的補償として酒居知史投手(27)がロッテから楽天に移籍し、鈴木の人的補償として小野郁投手(23)が楽天からロッテに移籍した。パ・リーグは2020年6月29日までに9試合を消化したばかりだが、酒居、小野両投手の今シーズンをみてみると、6月26日に小野がオリックス戦の2番手で登板しプロ初勝利をマーク。翌日の27日には酒居が日ハム戦で移籍後初勝利を挙げ、人的補償で移籍した選手が続けて勝利をつかんだ。
酒居、小野ともに移籍後は出場機会を与えられ上々の滑り出しを見せている。一昨年、世間を騒がせた長野と内海はどうだったか。長野は移籍1年目の2019年は代打要員としての起用が多く、出場は72試合にとどまった。打席は前年を大幅に下回る197打席で打点はわずか「20」だった。一方の内海は昨シーズンの開幕前に左浅指屈筋の肉離れで戦線を離脱し、結局、1軍マウンドに上がることが出来なかった。
ここ5年間でFAの人的補償として移籍した選手のなかで活躍の兆しをみせるのがDeNAの平良拳太郎投手(24)だろう。平良は2016年オフに山口俊投手(現MLBブルージェイズ)の人的補償として巨人からDeNAに移籍。昨年、一昨年と先発で5勝をマークし、今シーズンは開幕ローテーション入り。6月28日の阪神戦では今シーズン初勝利を上げている。24歳とまだ若く、今後のさらなる成長が期待される。
赤松のスーパーキャッチは米国でも話題に
時をさらにさかのぼると、人的補償として移籍した後に飛躍を遂げた選手はまだいる。2013年オフに大竹寛投手(37)の人的補償として巨人から広島に移籍した一岡竜司投手(29)がそのひとりだ。巨人時代はわずか13試合登板だった一岡は、広島移籍直後の14年は開幕1軍入りを果たし中継ぎの一角としてブルペンを支えた。昨シーズンは夏場に体調不良から戦線離脱するなど不本意なシーズンとなったが今シーズンに巻き返しを図る。
移籍後に広島で輝きを放ったもうひとりの選手が赤松真人外野手(37)だ。2007年オフに新井貴浩内野手(43)の人的補償として阪神から広島に移籍。阪神時代の3年間で36試合しか出場経験がなかったが移籍直後の08年には125試合、09年は137試合、10年は113試合に出場し3連連続で100試合出場を果たした。なかでも10年8月4日の横浜ベイスターズ戦でホームラン性の打球をフェンスに駆け上がってスーパーキャッチしたプレーは、日本国内だけでなく米国でも大きな話題となった。
移籍後にタイトルを獲得した選手もいる。2007年オフに石井一久投手(46)の人的補償として西武からヤクルトに移籍した福地寿樹外野手(44)だ。1番打者として移籍直後から活躍し、08年は131試合に出場して42盗塁を決めて盗塁王を獲得。プロ15年目にして初タイトルとなった。翌年09年も42盗塁をマークし2年連続で盗塁王となった。その後は「足のスペシャリスト」として貢献。13年からはヤクルトのコーチを務めている。