宇都宮氏&山本氏「10論点」で主張一致 違いは「コロナ対策15兆円」の是非に

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   2020年7月5日に投開票される東京都知事選の主要候補のうち、元日弁連会長の宇都宮健児氏(73)と、 れいわ新選組の山本太郎代表(45)は、福祉を重視するなど政策面では近いと考えられている。実際、6月27日の候補者討論会の10のテーマについて賛否を問うコーナーでは、両氏の回答は完全に一致している。

   だが、両氏で大きく異なるのが財源をめぐる考え方だ。山本氏は総額15兆円の都債を発行して資金調達する考えだが、6月28日に開かれた討論会では、宇都宮氏がその実現性に疑問符をつける場面もあった。

  • 日本記者クラブが開いたオンライン討論会でも、15兆円の財源の実現性が議論になった
    日本記者クラブが開いたオンライン討論会でも、15兆円の財源の実現性が議論になった
  • 日本記者クラブが開いたオンライン討論会でも、15兆円の財源の実現性が議論になった

「命をつなぐ生活補償の徹底」 vs 「コロナ損失を徹底的に底上げ」

   選挙公報に掲載された公約では、宇都宮氏は「命をつなぐ生活補償の徹底」を掲げる一方、山本氏は「総額15兆円であなたのコロナ損失を徹底的に底上げ」とうたっている。これまでに3回にわたって行われた候補者討論会では、15兆円の財源のあり方が、たびたび議論のテーマになった。

   地方自治体が地方債を発行するには、都道府県と政令指定都市は総務大臣、市区町村は都道府県知事の同意を得る必要があるが、実質公債費比率(一般財源の規模に対する公債費の割合)が18%未満と比較的財政状況が良い自治体は、民間金融機関を借入先にすれば、事前届出のみで発行できる。

   日本記者クラブが告示前日の6月17日に開いたオンライン討論会では、山本氏は東京都の実質公債費比率が1.5%で、他の自治体よりも圧倒的に低いことを指摘した上で、

「20兆円というお金を調達したとしても、これは、総務大臣の許可が必要な実質公債費比率の18%を超えるというところにまでいかない。逆にそういうものを調達したとしても、これは、東京の信頼というものがあれば、これは市中でも、金融機関でも喜んで買ってもらえる話であろうと、確認を取っている」

と主張。これに対して、現職の小池百合子氏(67)は大きく2点反論した。ひとつは、使い道の問題だ。地方財政法第5条第1項では、地方債発行で得た財源の使途を制限しており、具体的には

「災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合」(第4号)
「学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設事業費」(第5号)

などを挙げている。

小池氏「他のところを削っていかなければならないという、現実的な問題」

   小池氏はこれを念頭に、

「地方債の発行にはいくつかの条件がある。これは適債ということがあって、債券を出すにあたって適しているか否かということで、例えばそれをどういう目的で使うのか、ということによって、しばられる。総務省に何をどうお尋ねになったのか、よく分からないが、それがルールになっている」

と述べた。もうひとつが償還の問題だ。東京都の20年度の一般会計の予算規模は7兆3540億円。小池氏は、公債費が拡大することへの懸念を口にした。

「その7兆円の中で(編注:仮に10年で償還するとして)毎年1.5兆借金返しをしていくということは、他のところを削っていかなければならないという、現実的な問題がある。そしてやはり、ここで一気にその分をばらまいてしまうことの、その後の後遺症をどうやっていくのか」

   ネットメディアの「Choose Life Project」が6月27日に主催・配信した討論会では、元熊本県副知事の小野泰輔氏(46)が、

「私も地方財政やっていたが、かなり厳しいんじゃないか」

疑問視。山本氏は東京都の実質公債費比率の低さを改めて強調しながら、

「一度に15兆円を一気に調達するとは言っていない。なので『総額』。必要な分を必要なだけ、事前に調達していくということならば、何も問題はないと思っている」

などと主張した。対する小野氏は、15兆円の都債は発行可能だとの見方を示しながら、財政規律の面で問題が出るとして批判した。

「私も総務省の友達がいるので、色々確認したが、20兆円は財政再建団体に行くまでのギリギリの金額だ。だからリスクは大きいと思うし、おっしゃるように『一気にじゃない』ということは分かる。私ももちろん、財政再建、財政の適正化は実現しながらやりたいと思っている。私も公債を発行しないわけではなくて、必要に応じてしっかりと必要なものは発行していきたいというスタンス。15兆円というと非常に派手な感じで聞こえるが、是非、財政規律は守らないとダメだと思う」

宇都宮氏「一般的なコロナ対策では地方債は無理なのでは」

   6月28日に東京青年会議所(JC)が主催した討論会では、宇都宮氏が山本氏に直接疑問をぶつけた。宇都宮氏は、前出の地方財政法第5条第1項の

「災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合」(第4号)
「学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設事業費」(第5号)

という規定を念頭に、

「15兆というのは、地方債は目的が決まっていて、建設債しかダメなのではないか。一般的なコロナ対策では地方債は無理なのではないか」

と、実現性を疑問視。山本氏は、第4号の記述を根拠に、

「災害のソフトにも使えると(規定されている)。これは国が災害指定しないとダメだが、ここでしないんだったら東京都としてやるしかない。国に許可を求めないと、地方債が発行できないという状況ではない、東京は。だったら東京オリジナルとして資金を調達し、東京都としてこれは災害に指定するという形でやっていかないと」

などと主張した。

   都の貯金にあたる「財政調整基金」は20年3月末時点で9345億円あったが、新型コロナ対策で、その95%を取り崩したことが明らかになっている。宇都宮氏はこの討論会の中で、財政調整基金が取り崩された状態でも、約3兆円が捻出可能だと主張した。

「財政調整基金以外の基金の中から、条例を変えれば1兆円ぐらいの基金が作れる。それから、道路政策。(木造住宅密集地域の防災性を図るための)特定整備路線や外環道、こういうのを見直して1兆円ぐらい造る。それから地方債については、公共施設や道路や、施設を作るためには発行できる。だからそれを1兆円ぐらい発行してもらって、その浮いた予算を、コロナ災害対策に当てる。3兆円ぐらいは特別な基金が作れると考えている」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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