2020年7月5日、東京都知事選は投開票日を迎える。関西在住の筆者からすると少し縁遠い話題だが、選挙戦で聞こえてきた「2階建て電車」というワードに思わず反応した。
今回はヨーロッパでの乗車経験から2階建て車両に対する率直な感想を述べたいと思う。
ヨーロッパではよく見られる2階建て客車・電車
はじめに筆者はチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー」を務めていることもあり、旧東側諸国(ドイツより東)を定期的に訪れている。そのため「ヨーロッパ」と言っても、中東欧諸国に限られることをご容赦願いたい。
筆者がヨーロッパを訪れた10年前は主にドイツやチェコで2階建て客車・電車を見かけたが、近年は多くのモダンな2階建て電車があらゆる国で走っている。
中東欧諸国における2階建て車両の普及は意外と古い。ドイツ民主共和国(東ドイツ)では1970年代から緑色の2階建て客車を大量増備し、旧東側諸国に輸出していた。残念ながら東ドイツ製の2階建て客車には乗車したことはないが、車庫の端で眠っている姿を見たことはある。
今までドイツやチェコ、リトアニアなどで2階建て一般客車・電車に乗車したが、印象は「快適そのもの」だった。都市の人口密度にもよるが、2階建てになっているため輸送力が大きく、混雑することはない。車内は4人掛けのボックスシートが多く、2階席の大型窓から眺めるヨーロッパの車窓は格別だ。つい「日本にもこのような車両があればなあ」と思ってしまう。
欠点は乗降時
それでは2階建て一般客車・電車が「欠点なし」と言われるとそうではない。ヨーロッパの2階建て車両のドアは各車両2ドアしかなく、2階建てという構造も相まって、ターミナル駅では乗降に時間を要する。この「乗降に時間を要する」が2階建て車両の最大の欠点なのだ。ヨーロッパは都市の成り立ちが日本と異なり駅間距離も長いことから、多少の乗降時間なら問題ないのだろう。
首都圏でも1990年代にオール2階建て通勤電車が導入され、東海道本線の快速列車などに投入された。しかし乗降に時間を要するという構造的な理由から、現在では主に行楽向けの臨時列車に使われている。
このように首都圏や関西圏をはじめとする大都市圏では2階建て車両の本格導入は難しいように思われる。
(フリーライター 新田浩之)