新型コロナウイルスが人間の社会生活に対して中長期にわたって影響を及ぼす「ウィズコロナ」の状態を覚悟せざるをえなくなり、企業もそれに応じた経営判断を迫られている。
早速動き始めたのは外食業界で、特にファミリーレストランチェーンは店舗の閉鎖を相次いで決めている。
「第2波」備え体力を強化
全国でファミレス「ジョイフル」を展開するジョイフルは2020年6月8日、約700ある直営店の約3割に相当する200店程度を翌7月から順次閉鎖すると発表した。新型コロナウイルスの感染防止で店舗を一時休業していたため、ファミレス「ジョイフル」の2020年4月の既存店売上高は前年同月より55%減り、5月も52%減少していた。閉鎖するのは収益の改善が見込めない店舗になるという。
会社としてのジョイフルは大分県に本社があり、数少ない福岡証券取引所の単独上場銘柄の一つ。西日本を中心に店舗を展開するが、首都圏にも出店している。会社設立は1976年で、2018年には関西で居酒屋やうどん店などを展開するフレンドリー(本社・大阪府、東証2部上場)を傘下に入れた。このフレンドリーも2020年6月4日、店舗数の約6割に当たる41店を順次閉鎖すると発表している。
閉店の動きはジョイフルに限ったものではなく、ファミレス「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルホールディングスも2020年5月、グループ内の他の業態も含めて不採算の約70店を閉店すると明らかにしている。
新型コロナウイルスの感染が拡大して緊急事態宣言を発令されていた時期に国や地方自治体が呼び掛けていた外出自粛は和らいできたものの、感染の第2波が懸念されている現状では、家族そろって外食に出向くといった「コロナ前」のライフスタイルには戻りにくいのが実情だ。
ジョイフルは店舗閉鎖の理由に「消費者の行動や外食に対する価値観など、外食産業を取り巻く環境が大きく変化することが見込まれる」と挙げている。不採算店舗からの撤退によってグループとして収益力を高め、財務基盤の強化によって「第2波」に備える狙いといえる。
居酒屋にも大きな影響が...
感染拡大を避けるために事務職を中心に導入を余儀なくされた在宅勤務も、外食業界が今後の戦略を見直す要因となっている。緊急事態宣言は解除されても、感染の再拡大を懸念して継続している企業も多く、在宅勤務でも業務に支障が生じないと分かった職場では定着する可能性が高い。これでは仕事が終わった後に「居酒屋で一杯」の機会も減る。
そのため、「甘太郎」などを展開するコロワイドは、居酒屋業態を中心に全直営店の1割を当たる196店を2020年中に閉鎖する。ワタミも臨時休業中の居酒屋店舗のうち65店をそのまま閉鎖する。大皿で提供された料理を取り分けるという居酒屋のスタイルは、政府の専門家会議が打ち出した「新しい生活様式」では避けるべき事例に挙げられており、居酒屋業態は根本的な見直しを迫られかねない。両社はそれぞれ、外食業態の中では成長の余地がある焼き肉店の強化に乗り出しているが、全体の落ち込みを補うほどの伸びは見込めそうもない。
どんな業態の、どのような店舗運営なら生き残れるのか、模索が続きそうだ。