空調機整備も「コロナ対策」
このほか、細かく見ると、コロナ関連とは言い難いような項目がゴロゴロしている。例えば農林水産省の「スマート農業」(AI=人工知能やドローンを活用した先端農業)に10億円、スポーツ庁の「ハイパフォーマンススポーツセンター感染症対策」(国立スポーツ科学センターの空調機などを整備)に1.8億円などは、2019年度から同様の事業があったが、「『コロナ対策』との理由を後付けして、上乗せ予算を確保した形」(大手紙経済部デスク)。文部科学省の「国立青少年教育施設改修事業」(東京、静岡、兵庫、福岡の4施設計400室を個室にし、空調設備やWi-Fi、テレビなどを整備)に12億円計上したのは、海外からの帰国者収容のためという触れ込みだったが、帰国者が検討当時の1日1万6000人から足元は500人程度に落ちているうえ、「そもそも富士の裾野に成田から人を運んで泊めるのか」(同)と疑問視される――といった具合だ。
補正予算は、当初予算が数カ月かけて財務省との厳しい折衝を経るのに対し、短期間でバタバタ決めるので、査定が甘くなりがち。特に、当初予算に入れると翌年度以降も継続になる道筋がつくため、補正なら1年限りと抵抗が少なく、他省庁や与党の顔を立てるために活用されることも多い。今回のように、経済危機への対応では、規模を積み上げることが重視され、中身が精査されずに通ってしまいがちなのも、毎度のことではある。
「GDP(国内総生産)の4割に相当する世界最大規模の対策」との安倍晋三首相のPRを聞くまでもなく、今回が過去に例のない規模なのは間違いない。経済危機の代表例のリーマン・ショック(2008年秋)を受けた経済危機対策(09年5月)でさえ、事業規模が56.8兆円、補正予算が14兆円(真水15.4兆円)だった。
コロナに苦しむ人からすれば、これまでの対策でも足りないと思うのは当然だが、アフター・コロナをにらんで経済運営、国家運営として財政赤字の拡大を放置はできない。
今回、2度の補正予算の財源はすべて国債で賄われ、追加発行額は計57.6兆円。当初予算分と合わせた2020年度の国債発行額は90.2兆円と、当初と合わせた予算総額160.3兆円の56.3%に達する異常事態。20年度末の国債残高は964兆円になる見込みだ。さらに、過去最高となる63.5兆円を見込んでいた税収は、経済対策での納税猶予や経済の停滞により大幅に落ち込むのは確実で、50兆円割れと予測するエコノミストもおり、赤字が一段と拡大する。
主要国と比べると、2019年の債務残高の対GDP比率は、日本が237.4%に達し、米(109.0%)、英(85.4%)、独(59.8%)などと比べて突出して高い。