新型コロナが早期に発生・拡大した二つの国の対応が、世界の注目を集めた。発生源の武漢市を都市封鎖し、力で制圧した中国と、検査体制の強化やITによる追跡で第1波を抑え込んだ韓国だ。強硬策を取らずに拡大を防いだ「韓国モデル」とはどんなものであったのか。ここでは韓国が駆使した追跡システムの問題点や、独自の文化支援策にも触れたい。
「韓国モデル」の四つの教訓とは
韓国のコロナ対応は、欧米に感染が広がる2020年3月の時点で、大きな注目を浴びた。たとえば米紙ニューヨーク・タイムズは同月23日付の電子版に「韓国はいかに増加曲線を抑え込んだのか」という国際報道記者とソウル支局長の連名による記事を掲げた(ここでは東洋経済オンラインによる訳を引用)。
この長文記事は、まず韓国での1日あたり感染が2月29日で909人に達したのに、1週間後には半減し、4日以内にさらに半減を続け、3月22日には最小の64人にまで抑え込んだ事実を述べる。韓国では中国のように言論や行動を厳しく制限したわけではない。欧米のように、経済活動に打撃を与える封鎖政策も取っていない。では、どうして感染の増加曲線を抑え込むことに成功しているのか。
この記事は、「韓国モデル」の教訓を4つに分けて分析している。
第1の教訓は、「介入は早く、危機的状況になる前に」だ。政府は1月下旬、感染が初確認された1週間後には、製薬会社数社の代表と会い、緊急承認を約束したうえで、検査キットの早期開発を促した。その結果、2週間内に数千キット、記事が書かれた時点で1日に10万キットの製造能力を達成し、政府が17か国と輸出協議に入るに至った。
第2は「検査は早く、頻繁に、安全に」という教訓だ。
この記事が書かれた時点で韓国は計30万回以上の検査を行い、1人あたりの検査率は米国の40倍になっていた。韓国は、600か所の検査センターで「ウォーク・イン」方式の検査を行った。これは、透明なボックスに入って、接触しないまま、綿棒で採取した喉の検体を医療従事者に渡す仕組みだ。他方、50か所の「ドライブ・スルー」方式では、やはり接触しないまま、検体を渡し、10分後には検査結果が判明する仕組みを作った。
第3の教訓は「接触者追跡、隔離および監視」だ。
韓国は、2015年に「MERS(中東呼吸器症候群)」コロナウイルスが国内に流行した際、初期対応に失敗し、30数人が亡くなるという苦い体験があった。その時の教訓から構築したのが、感染者の追跡システムだ。これは監視カメラ映像、クレジットカードの記録、車やスマホの位置情報などを結び付けて感染者を追跡する方式だ。感染が確認されると、その地域の住人全員のスマホに緊急警報が流され、感染者の移動履歴が確認できる。接触の可能性がある人には、検査センターに相談するよう促す仕組みだ。
自主隔離命令を受けた人は別のアプリのダウンロードが義務付けられ、隔離から逃れた場合には最大2500米ドルの罰金が課せられる。
第4の教訓は「公衆の助けを募る」というものだ。都市封鎖をせずに、限られた資材、人員で感染を防止するには、情報を一般の市民と完全に共有し、その助けを借りるしかない。それには、「政治的な意志」と「公衆の意志」を結び付け、時間との闘いに勝つ以外にない。こうして記事は、「韓国モデル」は、小規模の感染爆発が起きてから、迅速に、大規模に取り組んでこそ効果のある「短期決戦型」の方式だと結論づける。