警察との住民の対立は以前から
ベスト警察署長はのちに、「撤退は自分の決断ではなかった。市が強い圧力に屈した。私は怒りを覚えている」と話した。女性で自らも黒人であるベスト警察署長は、デモ参加者と対話し、「あなたを見ると、自分の家族を思うんですよ」と黒人男性に語っている。
警察がホームレスの人たちを「暴力的なやり方で街から追い払おうとした」など、シアトルでは警察と住民との対立が以前からあった。
2017年には、黒人女性チャーリーナ・ライルズさんが自宅に強盗が入ったと警察に通報したところ、駆けつけた警官に射殺される事件が起きた。警察は「ライルズさんが精神に異常をきたして、キッチンナイフで襲ってきたので、撃った」と主張している。
「自治区」設置に対してトランプ大統領は、「国内テロだ。自分の町を取り戻せ。やらないなら私がやる」、「思いやりをもって制圧する」と厳しく非難した。 一方、ダーカン市長は、「この国は抗議することで生まれた。抗議は憲法で守られた大切な権利」とし、インズリー州知事(民主党)とともに「トランプは口をはさむな」と反論した。
「自治区」は、銃やナイフを手にした「自警団」が見回りをしていた。現地から発信される報道や写真・動画によると、自治区では通りのスタンドで食べ物が無料で配布され、日用品が並び、親子連れの姿も見られた。
集会のほか、映画上映や音楽演奏、詩の朗読、野菜作りが行われ、「警察がいないから、穏やかだ」と集まった人たちは口をそろえていた。
多くの人々が助け合って平和に暮らしているように見えたが、もともとそこにいたホームレスたちを追い出したこともあり、混乱も見られた。一部で殴り合いなどの暴力的な行為もあった。