調査実施会社を明記する必要性は?
日本世論調査協会の小林康有事務局長は、協会は学術的な目的で集っており、規制団体のような性質をもつ組織ではないとしつつ、今回のフジ・産経事案をうけ、調査の品質をある程度保証する枠組みのようなものが必要になってくるのではないか、と指摘した。
同協会サイトをみると、読売、朝日、毎日新聞、TBSテレビといったメディアや日経リサーチなどの調査会社の名前が「会員」として記載されているが、フジテレビと産経新聞は入っていない。とはいえ、今回の不正事案は他人事で済ませてよい話ではないと捉えており、たとえば、世論調査記事への調査実施会社の明記も「前向きに考えた方がよい」という。
協会の倫理綱領「実践規程」には、「調査報告書には、次の事項を明記しなければならない」とする項目の中に、「調査の依頼者と実施者の名称」とある。この規程の「調査報告書」と、世論調査結果を受けたメディアの記事とは全く別物で直接の関係はないものの、読者からの信頼感や、調査実施会社の責任感・自覚を考慮に入れると、「記事への調査会社明記」は検討に価すると述べた。
埼玉大学社会調査研究センター長の松本正生教授にも話を聞いた。松本教授は『「世論調査」のゆくえ』などの著書があり、先に毎日新聞関連で触れた、「社会調査研究センター」社の社長でもある。今回のフジ・産経事案をうけ、朝日新聞や東京新聞などからもコメントを求められていた。
メディアによる世論調査全般への信頼回復については、「大切なのは2点ある」として、
(1) メディア側による、委託先の会社へのモニタリング(監視、検査)の徹底。
(2) モニタリングも、単に「社員が現場へ出向く」という程度では不十分だ。世論調査に関して詳しくて「眼力」があり、データを見て仮に不自然な点があればすぐに分かるような専門的な知識をもった担当者が、継続的に関わる必要がある。
と指摘した。
また、「記事への調査会社明記」については、「明記すべきだ」との考えを示した。データの権利関係上の話なら明記する必要はない、という主張は理解できるが、不正に対する「抑止力にもなる」という観点からも明記するのが望ましく、(明記していない社もある)メディア側の対応は「今後変わってくるのではないか」とみている。
フジ・産経両社は再発防止策を検討しており、対応策がまとまるまで世論調査を当面休止するとしている。どのような具体的な方策を示せるか、注目が集まる。