厚生労働省は19日(2020年6月)、新型コロナウイルスの接触確認アプリ「COCOA」を公開した。MIT Technology Reviewによれば、世界各国でこうしたアプリは、日本を含めて36ヶ国で開発されているという。
先進国G7の中でも、米国を除く、日本、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国で導入されている。その多くは、アップルとグーグルが5月に提供したAPIを利用し、GPSによる位置情報とBluetoothによる接触情報を組み合わせている(編注:日本のCOCOAはGPSなどの位置情報を使用していない)。
ポケモンGOと比べると今一歩
データの管理場所は国か個人端末かで異なり、情報で個人が特定されるか匿名かで、各国で方法が異なっているが、日本の方式は、データの管理は個人端末で行い、情報は匿名であるという意味で、もっとも匿名性が高いタイプとなっている。
多くの国で、アプリのダウンロードは義務ではなく任意である。一方、こうしたアプリは国民の少なくとも5~6割程度が利用しないと、大きな有効性を発揮できない。上記の資料では、国ごとで実際の浸透度の数字もあるが、高い国をみても、アイスランド38.45%、シンガポール31.92%、ノルウェー26.58%、バーレーン25.00%、イスラエル22.51%、オーストラリア21.20%と望ましい水準になっている国はまだない。ちなみに、G7諸国では、浸透率の数字は上記資料ではみれない。
日本の場合もこれから大変だろう。そもそもアプリを入れられるスマホの所有率は6割程度だ。ということは、ほぼすべてのスマホに、COCOAをインストールしないといけないわけで、これはかなり厳しい数字だろう。
COCOAのダウンロードは19日から始まったが、累積で19日85万件、20日179万件、21日241万件、22日326万件、23日392万件、24日419万件となっている。
筆者は、ポケモンGOファンでもあるが、同アプリは3日間で1000万件以上のダウンロードだったのに比べると、今一歩である。
経産省、国交省と「GO TO」で活用を
ちなみに、今のままのペースだと、せいぜい500~600万件のダウンロードにしかならないので、浸透度は10%程度にしかならず、大いに役立つアプリとはなりにくいだろう。
これは、無料アプリなので、ちょっとしたインセンティブがあればいい。筆者は入れているが、1、2分くらいの時間があればインストール可能だ。
筆者のまわりに聞いてみると、そもそもスマホにアプリを入れる発想がない人が多い。不特定多数の人が入る店、映画館、イベント会場では入口に検温システムがあるが、それと同時にアプリの確認をするという手もあるだろう。
筆者が出演している番組に寄せられた案であるが、「GO TO キャンペーン」の一環で、アプリを導入している人への少しの特典も検討したらいいだろう。このアプリは厚労省で主導されたが、その活用を経産省、国交省で考えたらいい。省庁間の縦割りのままではもったいない。
なお、マスコミ報道でも、不具合があったとばかりであるが、そもそもアプリには不具合はつきものだ。記者の使っているOSにも不具合は多いが、それで実際に困ったことはないだろう。不具合はニュースでないはずなのに、報じるのは不思議で仕方ない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「韓国、ウソの代償」(扶桑社)、「ファクトに基づき、普遍を見出す 世界の正しい捉え方」(KADOKAWA)など。