「FaceAppは危ない」どこまで本当か 男性化・女性化で人気も心配の声...専門家に聞いた

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   写真に写った人物を「異性化」加工できるアプリ「FaceApp(フェイスアップ)」が日本のSNS 上で話題を呼んでいる。

   ただ、かつての利用規約にはユーザーの肖像をFaceApp側が一方的に使えるかのような記述があり、データの取り扱いの不透明さも不安視されている。アプリの使用に問題はないのか。J-CASTニュースはITジャーナリストの三上洋氏に話を聞いた。

  • 話題の「異性化アプリ」の注意点は?(画像はFaceAppデモ画像の男性を「女性化」したもの)
    話題の「異性化アプリ」の注意点は?(画像はFaceAppデモ画像の男性を「女性化」したもの)
  • 話題の「異性化アプリ」の注意点は?(画像はFaceAppデモ画像の男性を「女性化」したもの)

伊勢谷友介、石田ゆり子らも「異性化」

   FaceAppはロシアのWireless Lab社が2017年にリリースしたスマートフォン向け写真加工アプリ。写真に写っている人間の表情を変えたり、老け顔にしたり、顔のパーツをサイズ変更したりすることが可能で、主に欧米のユーザーなどから人気を集めてきた。

   現在、アプリの中で注目を集めているのが、男性なら女性、女性なら男性といったように人間の顔を「異性化」できる加工機能だ。日本のSNS上では、20年6月半ば頃から自身の写真を「異性化」して楽しむ動きが広まっている。また、俳優の伊勢谷友介さんが「女性化」、女優の石田ゆり子さんが「男性化」した自身の写真をインスタグラムにアップロードするなど、芸能人の間でもブームだ。

   アプリは6月24日現在、Google Playでは「無料アプリ」の人気ランキングで厚労省の新型コロナウイルス接触確認アプリに次ぐ2位にランクイン。App Storeでも「写真/ビデオ」カテゴリで「YouTube」アプリに次ぐ人気2位につけている。

問題となっていた「利用規約」、だが実は...

   人気を集めるFaceAppだが、インターネット上ではアプリの内容を問題視する声や、安全性を不安視する声も聞かれている。三上氏は6月23日のJ-CASTニュースの取材に対し、こうしたアプリに対する指摘には4つの論点があると話した。

   その一つが、19年まで使われていたアプリの利用規約の内容だ。以下は規約に書かれた「ユーザーコンテンツ」の一部分を和訳したものだ。

「利用者はFaceAppに対し、ユーザーコンテンツ、およびユーザーコンテンツに関連して提供された氏名、ユーザー名、または肖像を、現存または今後開発されるすべてのメディア形式およびチャンネルにおいて、対価を支払うことなく、使用、複製、変更、翻案、出版、翻訳、二次的著作物の作成、配布、公の場での上演および表示を行うための、永久的、取消不能、非独占的、ロイヤリティフリー、全世界的、全額支払済み、譲渡可能、サブライセンス可能なライセンスを付与するものとする」
「利用者はユーザーコンテンツが商業目的で使用される可能性があることに同意するものとする」

   こうした規約に対し、ユーザーからは自分の写真を勝手に使われるのではないかという不安の声が噴出。その後、利用規約の該当部分は以下のように変更されている。

「FaceAppは、利用者が本サービス上または本サービスを通じて投稿したユーザーコンテンツの所有権を主張しません。利用者は、FaceAppに対し、本契約の期間中、本サービスを提供するためにのみ、ユーザーコンテンツを使用、複製、変更、翻案、二次的著作物の作成、配布、実行、表示するための非独占的、ロイヤリティフリー、全世界的、完全に支払われたライセンスを付与するものとします」

   三上氏は「当初の利用規約は一方的なものだった」とする一方で、規約の改定により問題は改善されたと解説する。

ロシアへの情報流出説は?

   三上氏が論点の2つ目にあげたのが、写真のデータをめぐる疑惑だ。19年7月、米国内ではアプリで使用した写真のデータがロシア国内のサーバーに勝手にアップロードされているのではないか、という疑念が広がった。しかし、セキュリティの専門家や米メディアの分析によれば、データがサーバーにアップロードされた証拠はないと判明。FaceApp側もこうした疑惑を否定し、ユーザーが加工に使う元画像をクラウド上に一時アップしているだけだと説明した。

   ただ、ロシア政府への情報流出を懸念した米上院議員のチャック・シューマー氏は、19年7月にFBIへ調査を依頼。FBIは19年11月にシューマー氏へ送った書簡の中で「FaceAppのようなロシアで開発されたアプリや製品は、防諜活動に対する潜在的な脅威になると考える」との見方を示している。

   残り2つの論点は「人種」「利用料金」の問題だ。「人種」は、かつてFaceAppに「顔を白くする」「人種別」の加工フィルターがあったことに対し「人種差別ではないか」という批判が噴出したというもの。批判を受け、現在はいずれのフィルターも使えなくなっている。

   「利用料金」は、追加機能が使える有料サービス「FaceApp PRO」をめぐるトラブルだ。ツイッター上では、誤って有料サービスに申し込んだというユーザーから、3日間の無料トライアル後に自動課金されたことを嘆く声が聞かれている。これについて三上氏は年3200円という高額な料金がトラブルの一因になっているとしつつも、「FaceApp側がいけないとは言えず、(利用を申し込んだ)ユーザーの責任になる」と語った。

「今のFaceAppが『良い』か『ダメ』かと言えば...」

   三上氏はこうした4つの論点はいずれも解決済み、あるいは大きな問題ではないとし、「現状、FaceAppの体制について特に問題はないように感じる。今のFaceAppが『良い』か『ダメ』かと言えば、『良い』と言うしかない」と見解を示す。

   その一方で過去に「人種差別的なフィルターを入れたことがある」「以前の利用規約は不当なものだった」という問題があったことが、ユーザーの不信感を生んでいると指摘する。

「ネット上の情報セキュリティをめぐる問題には『安全か安心か』という論点がある。『安全』は、今見えている条件の中で判断できるもの。そういう意味で言えば現在のFaceAppは『安全』と言える。ただ、過去の問題やロシア企業が開発している点を考えると、アプリが『安心』とは言い切れない」

   こうした状況の中で、FaceAppを利用するかどうかは「ユーザーの判断に問われている」とした。

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