隙間風が吹いている米韓関係が、「話題の本」で、さらに冷え込むことになりそうだ。米国のトランプ大統領の元側近、ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が2020年6月23日(現地時間)に出版した回顧録「それが起きた部屋」だ。
回顧録には、ボルトン氏が文在寅(ムン・ジェイン)政権への対応に不信感を募らせる様子が多数描かれており、2019年6月に板門店で行われた米朝首脳会談では、文氏も参加を強く希望し、米側が対応に苦慮したとも説明されている。韓国は米朝の「仲介者」「仲裁者」を自任し、たびたび北朝鮮から非難されてきた。仮にボルトン氏の認識が正しければ、韓国は米国からも「お節介」だと認識されていたことになる。
文大統領の非核化構想を「統合失調症的」
ベトナム・ハノイで19年2月に行われた2回目の米朝会談では、非核化をめぐる条件が折り合わず、交渉が決裂。ボルトン氏は、韓国側の交渉相手だった鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長の発言をやり玉に挙げた。ハノイ会談決裂から数日後、鄭氏は
「金正恩氏がハノイ会談にひとつの戦略しか持ってこず、『プランB』がなかったことには驚いた」
などと伝えてきたという。その中で伝えられた文氏の非核化構想を「統合失調症的」と、こきおろした。
「我々が北朝鮮の『行動のための行動』(編注:北朝鮮による非核化に向けた動きと、米国による制裁解除に向けた動きの両方を、段階的に進めていく考え方)という基本的な立場を拒否するのが正しいと考える中で、鄭氏もまた、文在寅大統領の統合失調症的な考えを反映していた。金氏が(編注:核関連施設がある)寧辺(明確に定義されたことは一度もない)を除去しようとしていることはきわめて有意義な第一歩で、北朝鮮は非核化に向けた不可逆的な段階に入ったことを示している、というのだ」