新谷氏のnote「小池都知事のアラビア語力をどう評価したらいいのかわからない方へ」全文(2)
フスハーとアンミーヤ
知事が話す言葉はエジプト口語(アンミーヤ)であり、大学を卒業したのであれば文語(フスハー)がしゃべれるはずだ、といった指摘がされることがあります。驚いたことに、アラビア語を聞いてもわからない議員が、「今ここでフスハーでしゃべったら許してやる」という始末。これは、そもそも議論の土台からして間違っています。
私は、フスハーを理解し、話せるようになることを目標に勉強したので、今も基本的にフスハーで話しますが、困るのは、エジプト人がアンミーヤで話し出した場合。あまり訛っていると理解できない場合もあるので、非常に緊張します。しかしエジプトの方は、アンミーヤで話すのが当たり前なので、博士号を持っていても、まったくフスハーではしゃべれない、という方は普通にいます。
フスハーで話す、ということは特別の訓練を必要とする作業で、メディア関係者、俳優、イマーム(モスクの導師)、アラビア語の先生、などはその訓練を積んでいます。しかしエジプトでは、イマームも一番人気のあった人はアンミーヤで説教するほど、アンミーヤが普通です。テレビもアンミーヤで話しています。シーシ大統領もアンミーヤで話されます。私はこれを通訳できる通訳者(日本人では少ない)として売り出していますが、内心ひやひやです。それほど、違う言葉であるということをご理解下さい。小池知事は、フスハーで話し始めても、少し時間が経つとアンミーヤになります。それは、ほとんどのエジプト知識人についても起こる現象です。