「台湾モデル」への称賛
全世界に感染が拡大する前から、台湾は、新型コロナ対策の「成功」例としてしばしば称賛されてきた。たとえば米CNNは4月5日、香港支局から、「台湾の新型コロナ対応は世界的に見ても最良の一つ」というレポートを放送した。
それによると、世界的にはまだ新型コロナがさほどの脅威とみなされなかった1月25日、中国本土との経済的なかかわりが深い台湾とオーストラリアで、4人の感染が確認された。意外に思えるが、台湾は人口2453万人、オーストラリアが2520万人で、ほぼ同規模だ。それが、放送時点でオーストラリアは感染者が5千人近く、台湾が400人以下と差が開いた。CNNは、オーストラリアが対応に失敗したのではなく、台湾の新型コロナ対策が傑出していたとして、その理由を探る。
最大の要因は、2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)で、台湾は15万人以上を隔離し、181人(CNN報道による。死者数については諸説がある)が亡くなるという手痛いダメージを蒙った。
その教訓を踏まえて今回は、早期に厳格な渡航制限措置を取り、マスクの製造能力を高めて国内向け製品を確保し、コロナ対策責任者や医療専門家が毎日ブリーフィングをするなど、情報公開を徹底させた。こうした迅速で果断な政策が、早期封じ込めに成功した要因だと指摘した。
CNNは4月16日にもロンドン発で、「多くの政府が最初は否認し、対応に手間取り、あげくにロックダウンする」というパターンを繰り返すなかで、早期に着実な対策を取った例として台湾、アイスランド、韓国、ドイツという四つのモデルがあると指摘した。
実際、前に述べた井戸川さんの表を見ても、台湾は百万人あたりの感染者数で18・6人にとどまり、アジア46国・地域の40位にある。百万人あたり死者数は0・3人で、これも40位に位置する。いずれをとっても、台湾が新型コロナの封じ込めに成功したことを示す例証といえるだろう。