外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(9)
台湾はなぜ抑え込みに成功したのか

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「百万人あたり」でみた日本の「現在地」は

   では世界の中で、日本はどうような位置にあるのか。井戸川さんに、6月9日時点のアジア、欧州、南北アメリカ各地域で、感染者数が多い国の順番から表の画像を作成していただいた。

   これを見ると、日本は百万人あたりの感染者数は136・1人で、アジア46か国のうちで30位。欧州すべて、南北アメリカの大半よりも低く、たしかに感染者が少ないことがわかる。

   それでは、死者数ではどうか。実は、この操作は、実際のサイトから感染者または死者数の表をダウンロードして、エクセルをお持ちであれば簡単に並べ替えができる。ここではわかりやすいよう、井戸川さんに死者数の多い順番から図表を作成していただいた。(表参照)

   これを見ると、百万人あたり死者7・2人の日本は、アジア46か国のうち20位。インドネシア、バングラデシュ、インド、韓国、シンガポール、中国などよりも高いことがわかる。ただし、この数値を他地域と比べれば、欧州では日本を下回るのはスロバキアのみで、南北アメリカではキューバ以下の9か国に過ぎないことがわかる。

   つまり、ここから言えることは、「日本の百万人あたり感染者数は、欧州、南北アメリカよりも低く、アジアの中でも低いグループに入る」が、死者数でいえば、「欧州、南米アメリカの多くよりは低いが、アジアの中では比較的高いグループに入る」ということだろう。

   しかし、このことから、「日本は欧米よりも感染者・死者数を抑え込んだが、アジアの中では死者数が高く、失敗している」という結論を引き出すこはできない、と井戸川さんはいう。

「日本はアジアの中でも高齢化率が高い。今回の新型コロナによる重症者や死者が高齢者に特に多いことを考えれば、今回の死者数のデータをもって、必ずしも『失敗』と決めつけることはできない」

   総務省統計局の「2018年国際比較で見る高齢者」によると、日本の高齢化率28・1%は、世界上位の10か国でもトップ。主要国の中でもイタリア、独、仏、英、カナダ、米を引き離し、14・4%の韓国、11・2%の中国をはるかに上回る。

   内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によれば、2015年時点の高齢者率はトップの日本の26・6%に対し、2位の韓国が13・0%、シンガポール11・7%、タイ10・6%、中国が9・7%で、インド5・1%や、フィリピン4・6%をはるかに引き離している。こうした高齢者率を加味して考えなければ、死者数を正確に位置づけることはできない、というのが井戸川さんの指摘だ。

   この項を終える前に、井戸川さんのサイトから、「トラジェクトリー解析」のグラフをご紹介したい。「トラジェクトリー」は「軌跡」や「軌道」、「流跡」などを示す言葉で、大気の移動がどのような経路をたどって観測地点に至ったのか、などの解析に使われている。井戸川さんは、縦軸に「人口100万人あたりの新規感染者(7日間)を対数、横軸に「人口100万人あたりの感染者総数」を取り、感染拡大のペースを視覚化した。新規感染のスピードが衰えれば、当然のことだが、感染者総数も減少する。その増加のスピードをグラフにしたものだ。

   サイトのグラフは各国を重ね合わせているので、すぐには見分けにくい。だが、自分で選びたい国だけを選んで、表示させることもできる。これを見れば、すでに感染を抑え込んだ国々は、ある時点で、井戸川さんの表現を借りると、「枝垂れ桜」のようにグラフが急下降しているのが読み取れる。一方、アメリカやブラジルなどは、まだ感染が続き、その方向性が見えていない。もちろん、サイトは日々更新されており、だれもが最新のデータを読み取れる。(https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/

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