前法相の衆院議員・河井克行容疑者(57)と妻の参院議員・河井案里容疑者(46)が公選法違反(買収)の疑いで逮捕され、東京地検特捜部が今後、「政界の闇」にどこまで迫れるか注目が集まっている。
今回は、異例の徹底した捜査が行われており、検察の覚悟もうかがわれる。夫妻の量刑見通しや政界ルート追及の有無などについて、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士に聞いた。
「検察vs官邸のバトルが幕を開けるのかな?」
「検察はよく頑張った」「検察vs官邸のバトルが幕を開けるのかな?」「これで後は、二階氏が言う『大物』まで上り詰めることができるかだ」...
2020年6月18日昼過ぎ、河井夫妻の逮捕がニュースサイトなどで報じられると、コメント欄などでは、こんな期待の声が相次いだ。
報道によると、克行容疑者は、案里容疑者が初当選した19年7月の参院選を巡り、票の取りまとめなどを依頼する目的で、地元・広島の県議ら91人に計約2400万円を提供した疑い。案里容疑者も共謀して、5人に計170万円を提供した疑いが持たれている。
2人が自民党に離党届を出して受理された17日、克行容疑者は、「法にもとるような政治活動を行ってきたことはありません」と買収を否定し、案里容疑者は、「弁護士から止められています」と説明を拒否したものの、一部週刊誌の取材には買収を否定している。
この事件では、地元議員らの大半が現金を渡されたことを認めており、検察は、事情聴取の様子を録音・録画しているという。また、克行容疑者のスマホにあるGPS機能を使って、現金を渡した日時や場所を特定しているとも報じられた。2人が徹底抗戦する可能性も視野に入れてのことともみられるが、検察は、買収の証拠については自信を持っているのだろうか。
「広島の特殊な状況下での事件なので、大物議員への波及はない」
この点について、若狭勝弁護士は6月18日、J-CASTニュースの取材にこう話した。
「2人の起訴は、ほぼ確定ですね。録画やGPSの件は、国会議員が無罪判決では大変なことになりますので、慎重を期したのでしょう。買収された側が証人で出たときに証言をひっくり返すこともありますので、録音や録画は極めて重要だと思います。票の取りまとめを供述していれば、決定打になるでしょうね」
また、逮捕容疑が当初報じられていた買収額とほぼ同じであることもポイントだと言う。
「買収人数の多さなどから2回にわけて逮捕してもおかしくない案件ですが、40日の捜査にせず20日で一括して起訴するのではないでしょうか。今回の逮捕容疑には、買収の回数や金額の全部を盛り込んでいるとみられ、それだけ証拠がそろっていて検察は自信があるんだと思います」
2人の量刑については、こう見る。
「克行容疑者については、懲役2、3年の実刑判決が出ると思います。案里容疑者は、買収の回数が少ないので、懲役2年程度で、執行猶予が付くかもしれませんね。徹底抗戦するなら、判決の確定まで時間がかかると思いますが、ウグイス嬢の買収事件による連座制で議員は失職になるでしょう」
選挙資金として、自民党本部から2人に1億5000万円が提供されたことが分かっており、その資金を使って用立てしたかもポイントになると若狭氏は指摘する。1億5000万円の残りの額がどこに行ったかも焦点だが、検察の捜査が政界ルートの追及にまで向かうかについては、こんな見方をした。
「1億5000万円を買収に使うよう指示していたならば、自民党本部における刑事責任が生じてきます。しかし、その提供そのものは合法で、広島というかなり特殊な状況下での事件ですので、大物議員の関与は考えにくいでしょう。道義的責任は問えると思いますが、そこへの波及はないと思います」
黒川弘務東京高検検事長の辞任による影響についても、こう言う。
「黒川さんだと、しっかりやらないと疑いの目で見られますが、辞めたので東京に事件を持ってきたのだと思います。しかし、黒川さんが辞めなくても、検事だったら立件を目指しますので、広島地検でやっていたと思います」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)