警察をバリケードから撤退させたのは市
ミネソタ州ミネアポリスで、白人警官が黒人男性を死亡させた事件を受け、全米50州に広がった抗議デモ。5月31日にはシアトルでも、大規模なデモへと発展した。おおむね平和な抗議デモだったが、デモ隊が道路を占拠し、乱入した一部の人たちによる放火や建物の破壊なども起きた。
同日、午後5時以降の外出禁止令が出され、2000人の州兵が市の要請で派遣された。
鎮圧するために、警察や州兵が催涙ガスやゴム弾を使うなどしたことで、デモ参加者から強い反発が起きた。
彼らは市に対して、逮捕されたデモ参加者の解放、警察の非武装化、警察の人員や予算を削減し、「コミュニティベース」の福祉などに回すことを求めた。
警察はバリケードを張り、デモ隊との対立が続いた。6月5日、ダーカン市長は、「身の危険がある場合を除き、今後30日間、警察は催涙ガスを使わない」と約束した。ところが、その後も混乱が続き、市長が約束した3日後に、ベスト警察署長の判断で催涙ガスの使用を再開した。
そして、6月8日。突如、警察が一斉にバリケードから撤退した。シアトル警察東管区は入口や窓を板で封鎖し、そこからも撤退した。そこへデモ隊がなだれ込み、警察署や市庁舎を占拠、街の一角に「自治区設置」を宣言した。
6月9日、カルメン・ベスト警察長官は緊張を和らげるために、何人かのデモ参加者と話をした。
女性で自らも黒人であるベスト警察署長が黒人男性に、「あなたの顔を見ると、自分の家族のことを思うんですよ。対話を持ちましょう。私にその用意ができています」と語っている。
6月10日、人々は市庁舎になだれ込み、警察の経費削減の即実行を求めた。応じないのであれば、「辞任を」と市長に突きつけた。
警察が撤退したことについて、ベスト警察署長はのちに、「撤退したのは、私の決断ではありませんでした。市が強い圧力に屈したのです。私はそのことに怒りを覚えています」と語っている。
占領された警察署を取り戻したいが、市長はそれを望んでいない。
「自治区」は今、どのような様子なのだろうか。