米北西部ワシントン州シアトルの一角が、デモ隊に占拠され、「自治区」が設置された。今ここで一体、何が起きているのか。
この連載の前回の記事「『シアトル占拠』に市長『お祭りみたい』、大統領は『制圧せよ』」に続いて、その背景と現状を自治区からの情報や現地の報道をもとにあらためて伝えたい。
「警察(POLICE)」を「人々(PEOPLE)」に書き換え
シアトルでは2020年6月10日から11日にかけて、数百人のデモ隊が市街地の一角である市庁舎周辺にバリケードを築き、6ブロックを自治区に設定したと宣言した。
シアトル警察東管区も占拠し、その建物正面の文字は「警察(POLICE)」が「人々(PEOPLE)」に書き換えられ、「SEATTLE PEOPLE DEPARTMENT」とされた。
トランプ大統領はデモ隊を「無政府主義者だ」、「シアトルを乗っ取った国内テロだ」と厳しく非難し、「これはゲームじゃない。無政府主義者をストップしろ」、「自分たちの町を取り戻せ。今すぐにだ。やらないなら私がやる」と次々にツイートした。
トランプ氏は、「シアトルを、暴動で町が荒れたニューヨークの二の舞にするわけにはいかない」、「命を救うためだ。『思いやり」の制圧だ」と主張する。
これに対し民主党のジェニー・ダーカン市長は、「トランプ氏はホワイトハウスの地下壕に引っ込んでいなさい」、「抗議し、ひどい政府には立ち向かう。それが憲法で守られた大切な権利です」と反発した。
同じく民主党のジェイ・インズリー州知事も、「統治能力のない人間は、ワシントン州に関わるべきじゃない」とトランプ氏を非難した。
自治区の入口には、「YOU ARE NOW ENTERING FREE CAP HILL(あなたはここからキャピトルヒルの自治区に入ることになります)」と書かれた看板が掲げられている。デモ隊は警官に邪魔されず、中を自由に移動している。
銃を携帯する男性が米メディアのインタビューで、「ここで警備に当たるために自分の仕事はやめました」と答えている。このような事態になった背景は、何なのか。