再開したら「何気ない話をしたい」
色々な立場の「人」に思いを馳せてきたからこそ、「戦術やシステムの大切さがまた分かってきました。今まで思っていた戦術論とは違った楽しみ方もできるようになってます」と平畠さんは話す。
「サッカーしているのは『人』なんですよね。以前は『システムがこう、戦術はこうで、こうやって攻めれば崩せるでしょ』って、理論や数字の噛み合わせで考えてました。だけど、そのシステムを採用するまでには監督や選手のいろんな試行錯誤があって、もしかしたら土地柄なんかも関係しているかもしれない。
僕も監督や選手とお話しさせていただく機会がありますが、『相手の長身FWにヘッドで1発決められて負けた。対策を練ってきて完璧のはずだった』といった裏話を聞かせてもらえることもあります。僕と同じくらいのおっさん世代の監督が夜中も考えまくってるんやろなあ、悔しいやろなあって思いますよ。試合でどっしり構えてる監督が、普段は狭い部屋でああでもないこうでもないと悩んでるって知ることもある。その中で、監督や選手がゴールを決めて、勝って喜んでるところを見ると感慨深くなりますよ」
Jリーグ再開後は「できるだけ多くスタジアムで見たい。去年は本の制作で全国を移動していて、例年よりも見た試合数が少なかったので」。現地観戦できる日を待ち遠しく思う一方、「いざ始まったらいつもの光景に戻っていくのでは」とも考える。
「この中断期間で感じた『日常のありがたみ』は頭の片隅に絶対に置いておかないといけません。でも、う~ん、毎回『サッカーできてありがたい』と思いながら観戦するのはちょっと違いますよね。当たり前に選手たちがサッカーをして、僕らも当たり前に現地で見られるようになることが、本当に日常に戻るということだと思います」
スタジアムに行けるようになったら何をしたいか。最後に聞くと、「何気ない話をしたいですね。『こんにちは、試合楽しみですね』『あそこのグルメが美味しいんですよ』とか、そんな話を皆さんとしたいです」と平畠さん。やはり、サッカーを通じて人と会えることを待ち望んでいた。
このインタビューの翌日5月29日、Jリーグは7月4日にJ1を再開、6月27日にJ2を再開、J3を開幕することと、無観客での開催から始めることを発表。6月9日の実行委員会では、7月10日以降段階的に観客を動員する方針が示された。そして、対戦カードと日程が6月15日に発表される。スタジアムで試合を見られる日が、少しずつ近づいている。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)