署名活動の狙い
署名サイト「change.org」では4月下旬、前述のような広告表現の見直しを求める活動が始まった。6月13日昼現在、約2万1000筆以上集まっている。
提出先はユーチューブを運営するグーグル社のほか、当該広告で宣伝されていた商品の販売元である3社(ヘルスアップ、エムアンドエム、Kanael)も含まれている。
エムアンドエム社をめぐっては、同社が販売するサプリメント「ファイラマッスルサプリHMB」で、筋肉増強や痩身効果をうたっていたものの合理的な根拠がないとして、消費者庁が20年3月、景品表示法違反(優良誤認表示)で措置命令を出している。
署名活動を始めた大学生の村田葵さん(20)は12日、J-CASTニュースの取材に、署名活動のきっかけを「私も以前からこうした広告に嫌な思いをしていましたが、数人の友人が広告を見て傷ついた、悩んでいるとツイッターでつぶやいていて、こちらから動かないと何も変わらないと思い立ち上げました」と話す。
「ダイエット関連の広告でいえば、太っているからフラれたとか、男性向けのひげ脱毛の広告なら、ひげが生えていると女性から拒否されるとか、今の時代にそぐわない固定観念、価値観をそのまま盛り込んでいるように思います。そういう広告が人の心を刺激するのでしょうが、人を傷つけることにもなるとわかって作ってほしいです」
村田さんも脱毛サロンに通った経験があり、コンプレックス商材自体を否定するわけではない。問題なのはあくまで「商品を売るために誰かを傷つけること」だとする。
署名は当初伸び悩んだが、6月からじわじわと増え始めた。村田さんは、米国を中心とする黒人差別の抗議運動で旧態依然とした固定観念に対する反発が広がったことや、インフルエンサーによる拡散が影響したと分析する。
村田さんによれば、署名は男女問わず幅広い年代から集まっているといい、賛同者からは
「自分の体を否定する感覚を植えつけるような広告は今すぐ停止してほしいです」
「こういった広告が倫理観に与える影響は計り知れないと思います。広告制作者にもそれを放送するメディアにも、相応のモラルを身につけてほしいです」
「自分は好きで薄毛になったわけでもない。広告はそうなったら男性として見られない!的な内容であったりイケメンしかモテない!という内容が多すぎる」
「ある基準を満たしていないと不幸になるだの女を捨ててるだの、そんな古い価値観を広告として公に流して恥ずかしくないのか」
といった声が寄せられている。
目標は1万筆(取材時点)で、集まり次第、先の4社に提出する予定だ。