新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが広がる中、住宅メーカーやリフォーム会社などが、快適な在宅勤務を可能にするための家作りに力を入れ始めている。大和ハウスが2020年6月、独自のノウハウを駆使し、新築住宅に仕事場を取り入れる提案をするプロジェクトをスタートするなど、在宅勤務対応は各社の大きな事業になっていきそうだ。
大和ハウスが提案する在宅勤務用の住まいは、仕事に集中しやすいよう家の中に密閉空間を作る「快適ワークプレイス」と、家族とつながりながら仕事ができる「つながりワークピット」の2種類。快適ワークプレイスは、同社が開発した防音室「奏でる家」の技術を使うなどして外の音を遮断し、オンライン会議などにスムーズに参加できるもの。つながりネットワークピットは、子育てや仕事を両立したいという人向けのスペースで、リビングルームとつながる空間に設置。子どもの様子をうかがえる室内窓なども設けるという。新築住宅に快適ワークプレイスを設置する場合、「約3畳の納戸で71万5000円~」という価格設定だ。
メーカーもリフォーム会社も
同社はテレワークを経験した社員に困ったことや望むことなどについてアンケート調査をしたところ、「仕事専用の空間がほしい」「子どもの様子を見ながら仕事をしたい」などの声が上がったことで、2種類の空間作りを提案しようと決めたという。
住宅メーカーの動きは活発で、他にもミサワホームはリビングルームの隣にコンパクトな部屋「ミニラボ」を設ける取り組みを強化。子どもが遊んだり、家族が集ったりするリビングルームに接していても、ドアを閉めるだけで静かな仕事空間が実現できるとアピールしている。
リフォーム会社も在宅勤務に合わせた対応を活発化させている。SOMPOグループの住宅リフォーム専門会社、フレッシュハウスは新商品「ステイリフォーム」を6月に発売。新築や増築となればコストもかかるが、既存の住宅の中の一角を仕事場に改装するもので、工事なども含めたパッケージで提供する。
現在の日本の住宅は、家族とふれあうリビングルームを最大化し、書斎のような部屋は持たないケースが一般的で、そもそも在宅勤務には向かない場合が多いとされている。このため、緊急事態宣言が発令されていた際は、一時的な仕事場に充てるため、テントなどを買い求める人が急増した。しかし、「リモートワークは今後、程度の差はあっても、多くの企業で定着していくだろう」(不動産関係者)と言われており、本格的な在宅勤務の拡大に向け、家の中の「仕事場作り」のニーズが高まっていくとみられている。