2020年6月11日、米ワーナーメディアが10日までに、動画配信サービス「HBOマックス」上で映画「風と共に去りぬ」の配信を停止した。今後、歴史的背景の説明や批判を追記したうえで再掲するとしている。
差別表現の削除や差し替えは、「偏見の存在自体を否定することになる」
映画「風と共に去りぬ」は、同タイトルのマーガレット・ミッチェルの原作小説を映画化したもの。南北戦争前後のアメリカ南部が舞台で、激動の時代を生きた女性を描く。1939年12月15日に映画が公開されて以降、世界的に大ヒットを記録した。一方で、同作はアメリカ南部に住む白人の目線で書かれたものであり、奴隷制を肯定するような描写も含んでいるとされる。
米ワーナー系列のストリーミングサービス「HBO Max」は、5月27日にサービスを開始。映画「風と共に去りぬ」も目玉のひとつとして配信を行っていた。しかし、奴隷の苦しみを描いた映画「それでも夜は明ける」の脚本を務めたジョン・リドリーさんは、映画「風と共に去りぬ」の配信を批判。6月8日の「L.A. TIMES」に掲載された意見記事で、「風と共に去りぬ」は、「南北戦争前の栄光」を賞賛し、「有色人種を最も痛ましいステレオタイプで描くものの一部」であると述べる。
翌9日HBO Maxは、白人警官に暴行されて黒人男性が死亡した事件や、それに伴う人種差別への抗議運動を考慮するとして、この日に同作の配信を停止した。
HBO Maxは、同作を「その時代の産物であり、残念ながらアメリカ社会ではありふれた民族や人種の偏見を描いている」と語り、歴史的背景の説明や批判を追記したうえで再掲するという。また、差別表現の削除や差し替えは、「偏見の存在自体を否定することになる」ために行わない予定だ。