新型コロナウイルスの影響でイベントのオンライン化が進む中、その波が握手会にもやってきた。福岡市を拠点に活動するHKT48が、2020年6~9月にかけて予定していた握手会イベントを延期し、参加券を持っている人は、9月上旬頃に行う「オンライン握手会」への参加に振り替えることができる。
オンライン握手会は、ライブ配信サービス「LINE LIVE」の機能を活用して、アーティストやアイドルと1対1で話せるサービス「LINE Face2Face」を利用する。握手会はファンとアイドルが直接話せる数少ない機会で、部分的にこれが復活することになる。一方、CDに握手会の参加券をつける方式は、アイドル事業の収益の柱のひとつでもある。オンラインでも持続可能なビジネスモデルを模索したい考えだ。
「親会社」へのLINE出資で関係強化
AKB48グループでは「おうちで握手会」と題して、メンバーが握手会でファンに語りかけるような「エア握手会」形式の動画を配信。これは不特定多数への一方的なコミュニケーションだった。これに対して、LINEが6月3日に発表した「LINE Face2Face」は、「オンライン上でアーティスト・アイドルの時間を独占できるチケット制ライブ」で、「有名人の時間を独占して、1対1で会話を楽しむことが可能です」とうたっている。LINEのPR室によると、オンライン握手会は「LINE Face2Face」に、HKT48向けに独自に開発された顔認証システムを組み合わせて運用する予定だ。
サービス登場の背景については
「外出自粛の中長期によってエンターテイメント業界における収益面での課題なども浮上しており、オンラインで収益化ができる新たなビジネスモデルの構築が早急に求められています」
と言及している。サービス開始は8月を予定している。
HKT48の運営会社「マーキュリー(Mercury)」の親会社「スプルート(Sproot)」にLINEが出資し、社外取締役を受け入れることが5月27日に発表されたばかり。今回のオンライン握手会も、関係強化の一環とみられる。
「従来型」復活待つか、「オンライン」参加に振り替えるか...
HKT48のオンライン握手会の対象になるのは、4月22日発売の新曲「3−2(さんひくに)」のCDにつく「個別握手会」の参加券。
AKB48グループの握手会は、「全国握手会」と「個別握手会」の2種類に大別される。「全国握手会」は店頭などで売られているCD「初回限定盤」についている参加券を持って会場に出向き、会場で誰と握手するか(どのレーンに並ぶか)を決める。これに対して「個別握手会」は、事前に握手するメンバーと時間帯が指定された参加券つきの「劇場盤」と呼ばれるCDを専用サイトで申し込む仕組みだ。
個別握手会は6月20日から9月12日にかけて計6回が予定されていたが、6月8日に延期が発表された。3月13日時点で、「握手以外の内容によるイベントに変更する可能性」が発表されていたものの、都道府県をまたぐ移動のリスクなどを踏まえて、イベントそのものを延期することにした。参加券を持っている人は、そのまま従来型の握手会が復活するのを待つか、オンライン握手会参加のためのシリアルナンバーと引き換えるかを選ぶことになる。
「まとめ出し」、待ち時間の「トークショー」「ミニゲーム」はどうなる?
LINEは「LINE Face2Face」のイメージ画像も発表している。ファン側の画面では、アイドルが画面に向けて手を差し出す映像が確認できる。実際の握手はできないものの、ファンと握手をするしぐさは残る可能性もありそうだ。「『オンライン握手会』専用アイテムによるコミュニケーション」も想定されているというが、画面には「ルールを守ってコメントしよう!」という注意書きもある。管理者(アイドルグループ運営者)側の画面では、「順番待ちユーザー」の一覧が確認できる。
従来型の個別握手会では、待ち時間に無料で見られるトークショーやミニゲームが開催されることが多く、複数の参加券を一度に出して、メンバーと話せる時間を延ばせる「まとめ出し」と呼ばれる制度もあった。こういった点がオンライン握手会で引き継がれるかもファンにとっては関心事になりそうだ。LINEの発表では
「ライブ参加者やCD・グッズ購入者だけが参加できる限定イベントも開催可能」
とうたう一方で、HKT48の広報担当者は
「お客様に楽しんでいただけるよう、開発・検討中でございます。詳細発表までお待ちいただければ幸いです」
としている。
メンバーからは、環境の変化に戸惑いながらも、前向きに受け止めようとするツイートが相次いだ。
「新しい試みなので、色々な意見があると思います。やっぱり直接会いたいし、そう思ってご購入して頂いてるので...。でも、やってみない事には変わらない。いつ会えるのか分からない中で皆さんとお話する機会を頂けて私は嬉しいです」(田島芽瑠さん=20)
「色々な意見があると思います。お互い対面できるわけではありませんが、目と目を合わせて会話する事はできる。私は、行動しないより行動した方がいいと思う人です」(田中美久さん=18)
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)