スズキ株価とインドとコロナ 「悲観論が後退」の理由

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   スズキの株価が持ち直し、2020年の年初来高値から3月の底値まで下げた分の6割超を回復した。

   売上高の3割を占めるインド市場への新型コロナウイルスの影響に対する悲観的な見方が強まり、トヨタ自動車や日経平均株価よりも下げがきつかった。しかし足元で最悪期を脱したことから悲観論がやや後退し、投資家の回復期待が高まっている。

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「独特の可能性を秘めた銘柄」との評価も

   インドは近い将来に、中国を抜いて世界最大の人口となる見通しで中長期的に経済成長を見込める。そのインドの自動車市場において現在、スズキの子会社マルチ・スズキは最大手メーカーの位置にある。それだけに、スズキは自動運転や電動化など自動車の最新技術で先行できていないものの、独特の可能性を秘めた銘柄とみられてきた。

   しかし、3月下旬から全土をロックダウン(封鎖)するなどのインド政府のダイナミックな対応により、コロナ禍がインド経済に与える負の影響は相対的に日本や中国などより大きそうだとの見方が多かった。そのためコロナ禍に襲われた今年前半の株価をみると、トヨタ自動車が2月6日につけた年初来高値から3月13日の年初来安値まで28.1%、日経平均が1月20日の年初来高値から3月19日の年初来安値まで31.3%それぞれ下げたのに対し、スズキは年初来高値(2月10日、5196円)から年初来安値(3月19日、2438円)まで53.1%安という大幅下落を記録した。

   2020年3月期連結決算におけるスズキの地域別の業績を確認すると、売上高は日本が1兆1795億円(全体の33.8%)、インドが1兆1211億円(全体の32.1%)とほぼ3分の1ずつという水準だ。20年3月期はコロナ禍前からインド経済が弱含んでおり、インド国内全体の月次新車販売台数も通年で前年割れが続いたため、日本がインドを上回っているが、19年3月期にはインド(1兆3082億円、全体の33.8%)が日本(1兆2524億円、全体の32.3%)を上回っていた。いずれにせよインド事業はスズキの「生命線」であることは間違いない。

ロックダウンと経済活動再開

   全土ロックダウンの影響はやはり大きく、4月のマルチ・スズキの販売はゼロ台を記録。4月はインド国内の工場が生産を停止したため、生産もゼロ台だった。ただ、5月に入って徐々に経済活動が再開され、マルチ・スズキの工場は生産を再開し、販売店も営業を始めた。5月の販売台数は前年同月比9割減の約1万4000台ではあったが、ゼロ台という絶望的な4月から見れば前進していることが確認された。

   こうした状況を受け、「最悪期を脱した」との見方からスズキ株に見直し買いが入り、6月8日につけた高値は4253円と年初来高値から18.1%安の水準まで持ち直した。年初来高値から年初来安値への下げ分から6割以上取り戻した格好だ。

   「インドはロックダウンの影響で銀行の不良債権の大幅増加が見込まれ、自動車ローンが借りづらくなるリスクがある」(野村証券)といった指摘もあり、インド市場の先行きは予断を許さないが、スズキの株価は回復期待を映していると言えそうだ。

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