「すごいガスくさい」「死ななくてよかった」――。キャンプ場でのカセットボンベの爆発を捉えた動画が、インターネット上で拡散している。
モデルの女性がキャンプの様子を生中継した動画の一部で、衝撃的なシーンが広がっている。
視聴者「危ないよ」「やばいって」
女性は2020年6月7日、一人でキャンプをする様子を動画配信サイトで生中継した。
拡散された動画では、女性がカセットボンベを携帯型コンロに装着するのに四苦八苦する様子が確認できる。
装着時に、シューとガスが漏れる音が響き、「すごいガスくさいけど」「やばい垂れてる垂れてる」と慌てふためく。視聴者からは「危ないよ」「やばいって」とコメントで注意が飛ぶも、「やめろばか? でもここで諦めるわけにはいかないんだよ」と意を決し、ライターで着火。すると、ガス漏れの音ともに焚火台で大きな炎が上がった。
女性はバケツをかぶせて消化を試みるも上手くいかず、その後、ボンベが爆発して吹き飛んで鎮火した。周囲は芝生で覆われ、女性の所持品とみられる物も散乱していたが、幸運にも燃え移らなかった。
女性は「死ななくてよかった」と安どし、原因を「昨日からガス漏れをめっちゃしてて、周りにガスがついている状態で着火しちゃった」などと説明している。
装着時に不備があったのか、製造元に瑕疵(かし)があったのかは不明だ。本人は取材に「使用方法に誤りがあったかどうかにつきましては私は素人のためわかりません。購入した製品には日本語の説明書もございませんでした」と答えた。所属事務所は事実確認ができていないとしつつ、「このような事が事実として起こっているならば大変残念に思いますと共に、事務所としましてはご迷惑、ご心配おかけした皆様にお詫び申し上げます」とコメントした。
キャンプ場「撮影を許可したつもりはない」
日本ガス石油機器工業会に8日、動画を見た上で見解を求めると、爆発は誤った装着が原因ではないかと分析する。
「カセットコンロ、ボンベについては正しくセットしてから使ってほしいとお願いしており、あれほどガス漏れしているのに着火するのは大変危険で、大きな事故にいたらず良かった」
日本キャンプ協会の担当者は、断定はできないと前置きした上で「おそらくはガスコンロ側の栓を開きすぎて火が大きくなったことや、爆発前に風向きの関係で比較的長い時間コンロに火があたっていたことによる過剰加熱が原因」とみる。
配信場所となった若洲公園キャンプ場(東京都江東区)を運営する東京港埠頭公園事業部の担当者によれば、拡散した動画を見て事態を把握したという。
けが人はおらず、施設の破損もなかったという。キャンプ場周辺を管轄する城東消防署も取材に、通報はなかったと答えた。
本人は配信サイト上で、施設側に許可を得て中継したとするが、担当者は「キャンプ場の利用者には申請書を書いていただくのですが、今回については公園の適正利用の範囲(編注:利用者同士での写真・動画撮影は可)での撮影ではないので、許可をしたつもりはない」と話す。
同社から女性にその旨を伝えて動画を削除するよう求めると、本人から謝罪があったという。
注意したいガス器具の取り扱い
独立行政法人「製品評価技術基盤機構」は5月26日、新型コロナの感染拡大防止により、「今年に入ってからカセットボンベの需要が増えています。備蓄や屋内での調理のためと考えられますが、使い方を誤ると製品事故が発生するおそれがあります」と注意喚起する。
東京消防庁は公式サイト(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-tama/info/gas.html)で、
(1)カセットボンベは表示通り正しくセットする
(2)コンロに指定されているボンベを使用する
(3)2台以上並べて使用しない
(4)大きな調理器具を使用しない
(5)カセットボンベを40度以上になる車内等に置かない
(6)家具、壁、カーテンなどから15㎝以上離して使用する
(7)石綿やセラミック付きの魚焼き器を使用しない
など14項目の注意点を挙げる。
なお経済産業省は、国が表示を義務付けた「PSLPGマーク」を取得していないカセットコンロは購入しないよう呼びかけている。
前述の日本キャンプ協会の担当者は、「今回の事故を教訓にしてほしい」と語る。
「過去にもガスボンベの爆発による事故は多発していますし、死者も出ています。誤った使用方法が原因のこともあり、うっかりしたミスや、正しい使用方法を知らない、『自分は大丈夫だろう』という正常性バイアスがあったなど、理由は様々だと思いますが、SNSが発達したこの時代、『ガスボンベの過剰加熱は爆発する』という事実がより広まれば良いなと思います。また、現在新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で、外出自粛が続いていますが、今回の事例のように、開放的な屋外に行きたいという需要は高まっていると思います。三密を避けた移動手段を持ち合わせている人は、積極的にキャンプやバーべキューを行うかもしれません。そのようなタイミングだからこそ、自分の身を自分で守るための教訓になれば良いなと思います」