希少価値の高いアンダースローで活躍した投手たち。その独特の投球フォームは、野球ファンなら脳裏に深く焼き付いているだろう。
今回は山田久志、杉浦忠、皆川睦夫、足立光弘、渡辺俊介の偉業を振り返ってみよう。
「史上最強」は誰?
・山田久志(阪急)
通算成績 654試合登板、284勝166敗43セーブ、防御率3.18
「史上最高のサブマリン」と称される。阪急の大エースとして75年からのリーグ4連覇に大きく貢献。最多勝3回、最優秀防御率2回、最高勝率4回獲得した。アンダースローで通算284勝をマークはプロ野球最多だ。手元でホップするような軌道の直球に、カーブ、スライダー、シュートと変化球はすべて超一級品。高速で鋭く落ちる伝家の宝刀・シンカーで打者を牛耳った。
・杉浦忠(南海)
通算成績 577試合登板、187勝106敗 防御率2.39
新人で開幕投手を務めて27勝をマーク。2年目は38勝4敗でリーグ優勝に貢献してMVPを獲得し、日本シリーズの巨人戦では第1戦から4連投4連勝の大活躍で南海を球団創設初の日本一に導いた。プロ7年目までに164勝をマークするが右腕の血行障害で全盛期は短かった。山田久志に通算勝利数で大きく差をつけられているが、その強烈な活躍ぶりから「史上最強のアンダースロー」の呼び声が高い。
・皆川睦雄(南海)
通算成績 759試合登板、221勝139敗、防御率2.42
杉浦忠と並ぶダブルエースとして活躍。同じアンダースローでも杉浦忠が快速球を武器とする本格派で、皆川はシュート、シンカーと制球力で勝負する技巧派の投球スタイルだった。杉浦の陰に隠れて地味なイメージだったが、最多勝利1回、最優秀防御率1回、最高勝率2回獲得するなどプロ18年間で221勝をマーク。同期入団の野村克也と長年バッテリーを組み、「野村に助けられた」と感謝の念を常に忘れなかった。
近年の投手でいえば...
・足立光宏(阪急)
通算成績 676試合登板、187勝153敗3セーブ、防御率2.91
20代では直球で押す投球、30代からはシンカー、2種類のカーブで打者を翻弄する投球にモデルチェンジし、同じアンダースローの後輩・山田久志と共に阪神黄金時代を支えた。フィールディング能力も高く、ゴールデングラブを4度受賞している。76年の日本シリーズ・巨人戦では阪急が3連勝の後に3連敗し、7戦目に登板。完投勝利で2年連続日本一に貢献し、プロ野球ファンの心を揺さぶった。
・渡辺俊介(ロッテ、米国独立リーグ・ランカスター)
通算成績 255試合登板、87勝82敗1ホールド、防御率3.65
地上スレスレから投げる投球フォームで04年に12勝、05年に15勝を挙げてエース格に。06、09年とWBC日本代表で連覇に貢献した。「最強のアンダースロー」としては上記の投手たちの成績に比べて物足りなく感じるが、打撃が飛躍的に向上した現代野球で130キロ台の直球に「ツーシームジャイロ」と呼ばれる90キロ台のカーブと100キロ台のスライダーで凡打の山を築く快投は芸術的だった。