香港問題の日本対応「欧米は失望も」共同報道 一方で菅長官「関係国は評価」と強調

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   香港への「国家安全法制」導入を進める中国に対し、米英など4か国が「深い懸念」を示した共同声明に国内でも注目が集まっている。共同通信が「日本、中国批判声明に参加拒否」「(略)欧米は失望も」と報じる一方、自民党の国会議員の中にはツイッターで共同報道に否定的な見解を示す情報発信を行う動きも出ていた。

   菅義偉官房長官は記者会見で、共同報道を念頭に置いた質問に対し、日本政府は既に「深い憂慮」を表明しており、こうした対応について「(米英など)関係国は評価して」いると強調した。一方で、「外交上のやりとり一つ一つにお答えすることは差し控えますが...」と明言を避ける場面もあった。

  • マスク姿で会見する菅官房長官(画像は政府インタ―ネットTV動画より)
    マスク姿で会見する菅官房長官(画像は政府インタ―ネットTV動画より)
  • マスク姿で会見する菅官房長官(画像は政府インタ―ネットTV動画より)

「失望の声が伝えられたという事実は全くありません」

   菅長官は2020年6月8日の会見で、香港問題で中国を批判する米英などの共同声明に関する質問を受けた。記者は、日本が共同声明への参加を拒否したとする「一部報道」に言及し、「(声明への参加の)打診の有無」や「拒否をしたのか」の「事実関係」について確認を求めた。

   質問者の念頭にあるのは、共同通信(ウェブ版)が7日に「ワシントン共同」発のニュースとして報じた「日本、中国批判声明に参加拒否 香港安全法巡り、欧米は失望も」の見出し記事とみられる。同記事をめぐっては、自民党の片山さつき参院議員らがツイッターで否定的な見方を示すなどし(後述)、注目を集めていた。

   菅長官は質問への回答で、中国の全人代(日本の国会に相当)が5月28日に香港へ「国家安全法制」を導入する方針を採択した際、日本は「他の関係国に先駆けて」、菅長官自身と(茂木敏充)外務大臣が「深い憂慮」を表明し、さらに外務省事務次官が駐日中国大使を外務省に呼んで「こうした我が国の立場」について「直接、明確に申し入れ」を行ったと説明。その上で、

「このように我が国は強い立場を直接、ハイレベルで中国側に直ちに伝達するとともに、国際社会に対しても明確に発言しております」

として、

「米国や英国をはじめとする関係国は、我が国のこのような対応を評価しており、失望の声が伝えられたという事実は全くありません」

と「否定」した。ただ、共同記事(7日早朝配信、同日夜アップデート)では「欧米は失望も」(見出し)、「米国など関係国の間では日本の対応に失望の声が出ている」「日本の決断は欧米諸国との亀裂を生む恐れがある」(本文)との表現になっており、菅長官の「失望の声が伝えられたという事実(は全くありません)」とは、かみ合っていない部分もある。

「外交上のやりとり一つ一つにお答えすることは差し控えますけれど...」

   さらに菅長官は、記者から質問があった「(声明への参加の)打診の有無」や「拒否をしたのか」については、

「関係国と緊密に連携して対応しておりますが、関係国との関係もあり、外交上のやりとり一つ一つにお答えすることは差し控えますけれど...」

と述べるにとどめ、

「いずれにしても、繰り返しますが、米国や英国をはじめとする関係国は香港情勢をめぐる我が国の対応を評価している」

と強調した。

   菅長官が言及した「憂慮表明」は実際、全人代が採択を行った5月28日の当日に行われている。菅長官は同日の会見で「国際社会や香港市民が強く懸念するなかで(採択が)なされたこと、及びそれに関連する香港情勢を深く憂慮しております」と表明。また、外務省サイトでも同日、「(略)香港の情勢を深く憂慮しています」とする「香港情勢について(外務報道官談話)」を日本語版と英語版で発表していた。

   また、米国と英国、オーストラリア、カナダの4か国が「深い懸念」を示した共同声明については、日本経済新聞などが5月29日未明配信の記事で「28日に出した」と報じていた。

   先の6月7日の共同記事に対しては、自民党の片山さつき参院議員が7日のツイッター更新で、記事を紹介した上で、

「たった今外務次官と話しましたが、G7で香港問題につき中国大使を呼んで抗議したのは日本だけ!外相も官房長官も明確に発言!その声明には独仏も参加しておらず、突然言われても、というだけの話だそう」

と、記事内容に否定的な見解を示した。同じく自民党参院議員の山田宏氏もツイッターで、

「酷い印象操作記事。当初各国足並みの揃わない時期未定の共同声明ではなく、速やかに明確な形でわが国が独自の声明を出した。(略)」

などと反発を示していた。

産経は「菅氏、中国批判の共同声明拒否報道を否定」と報道

   共同の当該記事は、配信を受けているメディアでも報じられており、東京新聞(ウェブ版)などが載せている。ツイッターでの報告などによると、産経新聞(同)も当初記事を流したが、削除したのか程なく該当記事を見ることができなくなったという。6月8日昼過ぎにJ-CASTニュース編集部が産経サイトを確認したところ、記事一覧には当該記事は見当たらなかった。次に「サイト内検索」で調べると、「日本、中国批判に参加拒否 香港安全法巡る共同声明 習主席訪日へ配慮か」の見出しで、表示される記事前半は共同記事と一言一句同じ記事の配信履歴が確認できたが、クリックすると「Not Found お探しのページは見つかりませんでした。ページが削除されたか移動した可能性があります」と表示される状態だった。

   6月8日の菅長官会見の当該部分については、「『日本の香港対応 米英などから評価』官房長官が認識」(NHK)、「日本の対応『米英も評価』 中国の国家安全法導入方針で―菅官房長官」(時事通信)、「菅氏、中国批判の共同声明拒否報道を否定 『失望の声、全くない』」(産経新聞)などと各メディアが報じている。

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