消費増税にあわせて導入された、政府主導のキャッシュレス還元事業が、残り1か月を切った。
新型コロナウイルスの影響で、現金から電子マネーやコード決済へ移行する人も増えつつある。キャッシュレス決済に追い風が吹くなか、この勢いを来月以降も保てるのだろうか。
開始当初より加盟店倍増
経済産業省は2020年6月1日、還元事業についての最新状況を公表した。同日時点での登録加盟店数は約115万店で、5月1日時点(約113万店)より若干増加したものの、3月(約104万店)から4月(約112万店、いずれも1日時点)の伸びと比較すると、落ち着いた印象がある。とはいえ、還元事業開始当初(19年10月)の約50万店からは倍増している。
普及にともない出費も増し、20年度補正予算(1次)では、新たに755億円が計上された。梶山弘志経産相は4月14日の会見で、この予算計上は「お約束の今年の6月末まで切れ目なく実施するために必要な金額」だとし、当初の予定通り終了する意向を示している。
新型コロナ専門家会議の提言を踏まえた、政府の「新しい生活様式」には、電子決済の利用が例示された。ただ「お得」だからではなく、感染予防の一環としての「現金離れ」も考えられる。
懸念点は「マイナポイント」と「手数料」
キャッシュレス決済にとって順風満帆に見えるが、懸念点もある。現在の還元事業が6月末で終了し、7月からは「マイナポイント」事業の申し込みが始まる。対象のキャッシュレス決済でのチャージや買物で、9月から25%(最大5000円)が還元されるもので、事前にマイナンバーカードを取得しておく必要がある。
マイナンバーカードは、特別定額給付金で知名度が増したが、その反面で発行までに日数がかかる上、受け取りや暗証番号再設定などの各種手続きには自治体窓口へ出向く必要があるなど、現状の課題も知れ渡った。「10万円ならまだしも、5000円のために手間を掛けたくない」と見送る人が増えてしまえば、キャッシュレス決済も、マイナンバーカードも、どちらの普及も見込めなくなる。
もうひとつネックになり得るのは、決済手数料だ。店舗設置のQRコードを客が読み取る「ユーザースキャン方式」では、現状で多くの事業者が、加盟店の手数料負担をゼロにしている。しかし、あくまで普及のためのキャンペーンで、各社期間限定の措置になっている。手数料を払ってもなお、店舗がメリットを感じるようでなければ、使える範囲は狭まる。これもまた、今後の課題となるだろう。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)