政府が全世帯に2枚入り布マスク(通称アベノマスク)を配布する中、100円ショップチェーンのダイソーがアベノマスクによく似た2枚入りのガーゼマスク(以下、ダイソーマスク)を販売していると話題だ。
J-CASTニュースはすでに届いている「アベノマスク」と「ダイソーマスク」を比べ、見た目や着け心地などの違いを確かめてみた。
「アベノマスクの存在意義が...」
アベノマスクは新型コロナウイルスの感染拡大による国内のマスク不足を解消する目的で、2020年4月17日から各世帯へ投函が始まった。厚生労働省の公式サイトによれば、6月1日時点での推計配布率は約53%。地域別では東京都が「概ね配布完了」となっている一方、宮城県や静岡県、和歌山県など配布率が10〜20%にとどまっている県もあり、配布状況には大きな差が出ている。
ツイッター上ではアベノマスクが届かないことを嘆く声がある一方で、市場のマスク供給量が増え、販売価格の低下も起きていることから「アベノマスクいらない」「届いたら寄付します」と、今後届いたとしても必要性を感じないという声も目立っている。
そうした中、100円ショップのダイソーが2枚入りのガーゼマスクを110円(税込み)で販売していた、とする画像付きのツイートが5月中旬頃から見られるようになった。透明なパッケージに入った長方形のガーゼマスクは、同じく透明な袋に入って送られてくる「アベノマスク」とそっくりで、
「ジェネリックアベノマスク100均で売ってた」
「ダイソーマスクがアベノマスクの市場をも取りに来た」
「アベノマスクの存在意義が...」
と指摘する声もあった。
気になる産地は...
J-CASTニュースは6月4日、都内のダイソー店舗で「ダイソーマスク」を購入し、すでに記者宛に届いている「アベノマスク」との比較を試みた。ただし、マスク自体に個体差がある可能性については注意されたい。
「ダイソーマスク」のパッケージには「やさしいつけ心地 綿100%ガーゼ」と商品の特徴が書かれている一方で、その下に小さく「マスクは感染を完全に防ぐものではありません」という注意書きも見られる。また、パッケージ裏面にも「臭いで気分が悪くなった場合は使用を中止してください」「肌に異常を感じた場合は、直ちに使用を中止してください」などの注意書きがある。一方、アベノマスクの同封資料にこうした注意書きはない。
「ダイソーマスク」のパッケージ裏面には「MADE IN VIET NAM」(ベトナム産)と書かれている。「アベノマスク」に産地の記述はないものの、過去には発注先の企業がベトナムからマスクを輸入したことが報じられている。
マスクを開けて並べると、高さはほぼ一緒だが、横幅はアベノマスクの方がわずかに長いことがわかる。ダイソーマスクは全体的に布の弛みが目立ち、縫い目が曲がっている箇所もある。アベノマスクも縫い目の曲がりはあるものの、ダイソーマスクほどの弛みは見られない。また、ダイソーマスクの方が厚みがあり、布自体の目も粗くなっている。
一度洗うと見た目に変化が
実際に洗う前の状態で着用してみると、ダイソーマスクの方は厚みがある分、若干の息苦しさを感じる。ただ、布の弛んだ部分が頰や顎の部分にうまい具合にフィットしているようにも思える。アベノマスクは弛みがなく、鼻の横や頰のあたりに隙間ができるため、空気がそこから抜けてしまう。ゴム紐はダイソーマスクの方が短く、しばらく着けていると耳に負担を感じてくる。
ただ、布マスクは洗って使うことを想定して作られている。そこで、一度手洗いした状態で比べてみると、ダイソーマスク、アベノマスクともに洗う前からサイズの「縮み」が見られた。ただ、ダイソーマスクの方は縮み方が大きく、洗う前ではアベノマスクとほぼ一緒だった高さが1センチメートル近く縮んでしまった。実際に着けてみても、はみ出なかった顎や鼻の部分がはみ出てしまうなど「小ささ」は否めない。一方のアベノマスクは、サイズこそ若干小さくなったものの、布に弛みが生まれ、洗う前よりもフィット感が出たように感じた。
菅義偉官房長官は6月1日の定例会見で、不要な布マスクを寄付する動きが広がっていることを受けて、今後に備えて洗って使える布マスクを保有してほしいとの認識を示した。
マスク不足が深刻だった春先に比べ、1箱数十枚入りで1000円を切るような安価なマスクが復活し、暑さ対策で「冷たさ」を売りにしたマスクも登場するなど、選択肢は広がっている。こうした状況で2枚110円の「ダイソーマスク」に手を伸ばすかどうかは、消費者の判断に委ねられそうだ。