外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(7)
英国はなぜ失敗したのか

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

コロナ禍とEUとの関係

   EUは国家主権を移譲しながら緩やかな共同体を作り、経済や政治の絆を強めてきた。感染対応ではEUでも国が前面に出て、国家単位の措置を取ることになった。コロナ禍はEUにどんな影響をもたらすのだろうか。

   私のその質問に対し国末さんは、「医療の権限は基本的に加盟国に残されており、EUに調整役以上の役割を期待するのは、もともと無理がある」という。それでも、EUの政府にあたる欧州委員会は3月初め、閣僚級からなる対策本部を設置し、各種ガイダンスの作成や医療関連物資の関税一時凍結、加盟国間の国境の状況確認、フェイクニュース対策などの活動を続けた。

   注目されるのは、ワクチンや医療関連物資を共同で購入するスキームだ。EUは2010年に「共同調達協定」(JPA)を発足させ、コロナ禍前までに、28か国のうち25か国が加盟していた。欧州委員会は2月28日以降、これを利用して手袋や手術着、人工呼吸器、呼吸用保護具などの入札を呼びかけた。これにEU外の国も次々に加盟し、4月中旬には37か国のスキームにまで発展した。

   だが、もともとEU離脱を主導したのは、イングランドのナショナリズムであり、ジョンソン首相自身がその流れを汲むポピュリスト的な性格が強い政治家だ。英政府はコロナ禍に際しても、独自の道を歩み、参加資格を持つEUの共同調達協定にも加わらなかった。もしEUからの助言や支援があったら、英国のこれほどの迷走は避けられたのではなかったか。国末さんはそう自問しているという。

姉妹サイト