北朝鮮の対外宣伝は、国営放送のアナウンサーが激しい言葉で周辺国を罵倒するイメージが定着しているが、実は「ソフト路線」も加速させている。
発信の場はユーチューブだ。若い女性が笑顔で流暢な英語を話し、平壌市内の「日常生活」を紹介する内容が大半だ。露骨な対外批判は現時点では封印。国外の視聴者に対するハードルを下げる狙いがあるとみられるが、体制アピールや、「フェイクニュースは必要ない」などとする海外メディアへの反論は健在だ。
学校再開喜ぶ様子紹介しながら「必要なものは、全部国が支給する」
北朝鮮当局が関与しているとみられるチャンネルは大きくふたつ。ひとつが、「Echo DPRK」と題して17年8月に登録されたチャンネルだ。18年7月から動画の掲載が始まり、6月5日時点で169本が掲載されている。6月5日に、チャンネル名を「Truth」(真実)に改称した。
金日成主席の回顧録「世紀とともに」の朗読動画にまじって、若い女性が市内を「立ちレポ」する動画が週に3本程度掲載されている。登場する女性は何人かおり、そのうち英語を話すのが「ウンア」と名乗る女性だ。
最新の動画は、新型コロナウイルスの影響で休校になっていた小中学校が6月3日に再開されたことを伝える内容。マスク姿で久々の再開を喜ぶ生徒や学生の様子を紹介しながら、
「12年の義務教育が無料で受けられる」
「教科書、文房具、カバン、制服など、子どもの生活に必要なものは、全部国が支給する」
などと教育制度を紹介。9歳の女子生徒が
「休み中はずっと家にいて、習字の練習をしていた。英語の書き取り、読書、日記をつけたりもしていた」
などと英語で答える場面もあった。