中国の習近平・国家主席の国賓来日問題に関するメディアの報じ方の違いが話題となっている。同じBS番組での茂木敏充外相の発言を報じた記事や見出しなのだが、ツイッターでは「同じ番組のニュースのはずなのに、ずいぶん内容が違う」といった感想も出ている。
茂木外相の発言は複数のメディア(ウェブ版)が報じているが、中でも産経新聞が「茂木氏『日程調整する段階にない』(略)」との見出しで伝える一方、毎日新聞が「習近平氏来日『11月のG20サミット後に』(略)」とした違いに注目が集まっている。
習氏来日について、前者が批判的で、後者が前向き・好意的といった印象を持ったユーザーが少なからずいたようだ。実際の発言はどうだったのか。J-CASTニュースがウェブ上で公開されているBS番組を確認した。
BS番組で茂木外相が発言
茂木外相は2020年6月3日夜、BSフジ「LIVEプライムニュース」に出演し、外交問題について、もう一人のゲスト、宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所研修主幹)と意見を交わした。当初4月に予定されていたが当面延期されることが3月上旬に決まった、習主席の国賓来日問題も議題に上がった。
来日問題での茂木外相発言について、複数のメディアがその日のうちにウェブ版で報じた。見出しを見比べる(4日夕確認時)と、
産経「茂木氏『日程調整する段階にない』 習氏国賓来日」
毎日「習近平氏来日『11月のG20サミット後に』 BS番組で茂木外相」
日本経済新聞「習氏来日は秋以降に 茂木外相『G7、G20が先』」
共同通信「習氏国賓来日は11月以降 外相『G7、G20が先』」
といった具合だ。
毎日と日経、共同の見出しは、概ね似通った表現とも言えそうだが、ツイッターでは、「産経と毎日の違い」に関心を寄せる人が相次いだ。印象論も含めて、中国や習氏来日に対し、産経は批判的で毎日は融和的・好意的といった見方を披露しつつ、今回の報道ぶり・見出しの立て方の違いに結び付ける意見をツイートする人もおり、産経と毎日の見出しを紹介しつつ、
「なんか産経と毎日で随分見出しの意味合いが違うんですが...」
「同じ番組のニュースのはずなのに、ずいぶん内容が違う」
といった違和感を指摘する人もいた。こうしたツイートが関心を集めたこともあってか、4日昼過ぎには「習近平氏来日」のワードがトレンド入りし、一時ランキング上位(15位以内)にも入っていた(ただし、4日の菅義偉官房長官の会見でも「習氏来日」問題に触れており、関連ニュースも配信された)。
「これが日程的にも先になるんだと思います。その上での話ということで...」
先の4社の記事に戻ると、産経が見出しに取った「日程調整する段階にない」の要素に記事中で触れたのは他3社では日経だけだった。一方、(表現はやや異なるものの)毎日などの見出しにある要素は産経も記事で触れている(「G7の方が先になる」発言に言及。G20には直接言及はなし)。
では、実際の発言はどうだったのか。BSフジ「LIVEプライムニュース」のサイト動画でJ-CASTニュースが4日に確認した。2時間近い動画のうち、習氏来日関連の話題が出て茂木外相が発言を始めるのは、50分過ぎ頃。司会者から見解を求められた茂木外相は、
「少なくともですね、今、具体的な日程調整をする段階にないのは確かだと思います」
と述べた。さらに、「日中新時代」に向けて必要な日本側の姿勢などに言及した。その後はしばらく司会者と宮家氏のやりとりが続き、5分以上が経ったあと、茂木外相がまた習氏来日問題について発言した。
「まずですね、外交日程的に申し上げると、どう考えてもG7(編注:9月開催予定)のサミットの方が先に来るのは間違いないんだと思います」
と指摘したうえで、サウジアラビアで11月に予定されているG20にも触れて「様々な国際的な枠組み」の中で、「(中国に対する)世論形成」を行っていくとして、
「これが日程的にも先になるんだと思います。その上での話ということでありまして...」
と指摘。中国からの国賓としての来日は前回の08年以来の「10年に1度」の事である点を踏まえ、日本としても中国としても成果を上げないと「互いに意味はない」として、「(編注:来日実現までには)事前の外交交渉の手腕が問われる」とも述べていた。
菅長官会見の記事では、NHK「日程調整の段階にない」と報じる
以上の番組内発言を踏まえた上で、先の4メディアの見出しをあらためて見比べた場合、どのような印象が残るだろうか。
なお、4日にあった菅長官会見での習氏来日関係発言の報道(昼配信のウェブ版)では、
「習氏来日『調整段階にない』 菅官房長官」(時事通信)
「中国 習国家主席の訪日『日程調整の段階にない』 菅官房長官」(NHK)
などとなっていた。