新型コロナウイルス感染拡大の影響で航空業界が苦戦を強いられる中、日本航空(JAL)が出資している中長距離格安航空会社(LCC)の「ZIPAIR(ジップエア)」が2020年6月3日夕、成田空港からバンコク(スワンナプーム)行きの初便を就航させた。
タイは入国禁止措置が続いているが、「我々が今できることをやる」ことを考えた結果、貨物だけを載せて運航することになった。
貨物専用便を「真剣に考え始めたのはゴールデンウィーク直前」
元々ZIPAIRは、5月14日に成田-バンコク(スワンナプーム)、7月1日には成田-ソウル(仁川)に旅客便を就航させる予定で、 JALで使用されていたボーイング787-8型機2機を改修して導入。そのうち1機は19年12月に報道陣にお披露目されていた。
だが、新型コロナウイルスの感染が本格化し、4月9日に就航延期を発表。運航会社「ZIPAIR Tokyo(ジップエア トーキョー)」の西田真吾社長によると、貨物専用便という選択肢について「真剣に考え始めたのはゴールデンウィーク直前」だったという。西田氏によると、「『貨物専用便で儲かるか』と聞かれれば『儲かりません』」。だが、その意義を
「いわゆる変動費、油(燃料)代、着陸料ぐらいはまかなえるという算段はついている。この貨物専用便を使って、日タイ間の経済活動の一翼を担いながら、我々パイロットをはじめとする社員の慣熟を図っていきたい」
などと話した。
タイでは現時点では6月30日まで入国禁止措置が決まっており、旅客便の就航は、この措置が解除されることが前提だ。ただ、仮に解除されたとしても、
「解除のされ具合というか、入国制限がまだ厳しいまま、もしくは検疫体制が強化されたままで、一体どのくらいの方が移動できるんだろうと...。日本側もタイ側の入国(管理)もそうだが、(日本とタイの)両方がそれなりに(需要が)見込めないと(旅客便として)成立をしないという部分がある」(西田氏)
といった具合で、旅客便就航へのハードルは依然として高い。
当面の間は成田-バンコクを週4往復する。親会社のJALとのコードシェア(共同運航)で、JALが受託したバンコク行きの貨物の一部をZIPAIRで運ぶ形。初便は機械部品、石けんや洗剤といった化学製品、計13トンを貨物室に積み、「容積としては『満員御礼』」(西田氏)。復路の初便はハードディスク(HDD)などの工業製品、約17トンを積んで成田に戻ってくる予定だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)