トランプ米大統領は、2020年6月3日未明(日本時間)、「SILENT MAJORITY!」とツイッターに投稿した。すると、アイドルグループ・欅坂46の同名楽曲「サイレントマジョリティー」を知る日本のツイッターユーザーを中心に盛り上がり、3日午前までに同曲の歌詞にひっかけトレンド入りするまでになっている。
抗議活動は全米に波及
発端となったトランプ大統領のツイートは、5月25日に起きた黒人男性ジョージ・フロイドさんの警官による死亡事件に呼応したデモに反応してのものとみられる。抗議活動は全米に波及している。大統領は「ニューヨーク市は州兵を動員せよ。ならず者と犯罪者が人々を引き裂いている。早急に行動せよ。(新型コロナウイルス対策で)老人介護施設で行った致命的な過ちを繰り返すな(編集部訳)」とツイートし、直後にこの「SILENT MAJORITY!」のツイートをしている。
欅坂46の「サイレントマジョリティー」には、「どこかの国の大統領が言っていた」という一節がある。これを知っている日本のユーザーが反応し、6月3日のツイッターのトレンド上位に。YouTubeの同曲のMVには「トランプから来ました」といったコメントも書き込まれている。
混迷の中のメッセージに共感か
「サイレントマジョリティー」は2016年4月6日のリリースなので、トランプ大統領の当選前に作られた曲である。ところが混乱する米国や世界の情勢は、にわかにこの楽曲のメッセージ性にマッチしてきたかのようだ。
「silent majority」という言葉は、ベトナム反戦運動に対し、共和党の当時のニクソン大統領が、多数の米国民はそのような過激な反戦運動に賛同していないというアピールで使った語(「グレート・サイレントマジョリティー」)としても知られる。トランプ大統領も、デモに訴える市民に批判的なニュアンスでこの言葉を使ったとみられる。直前のニューヨーク市へ州兵動員を促すツイートの中でも、民主党系のデブラシオ市長のコロナ対策を暗に批判している。
また、欅坂46の「サイレントマジョリティー」の「どこかの国の大統領」には続きがあり、声を上げなければ、世の中に「サイレントマジョリティー」として都合よく利用されてしまうと訴えている。当時のアイドル界に一石を投じ、同時に楽曲のメッセージとは裏腹に、アイドルビジネスの枠組みの中で、結局はプロデュースする上の世代が与えるアイドル像を演じているだけではないか、という冷ややかな指摘も出ていた。
一方、今回のさまざまな反応は、曲名との偶然の一致だけでなく、先が見えないコロナ禍の中でどう行動してよいのか、不安が先行する日本の人々も「サイレントマジョリティー」の強いメッセージ性を再確認し、前向きに生きる拠り所としたかったのかもしれない。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)