事態終息後に「改変」前の舞台も
「科白劇」「出演者同士のソーシャルディスタンス」とのことで、シリーズの大きな魅力だった殺陣は今夏の新作では一旦封印となるだろう。「科白劇」を額面通りに解釈すれば、動きのない、俳優の語りとしぐさだけで構成される舞台になると思われるが、演出に注目だ。
また気になるのは舞台の内容。当初のタイトルの「『刀剣乱舞』綺伝 いくさ世の徒花」を残しつつ、「改変 いくさ世の徒花の記憶」というサブタイトルを付け加えた。サブタイトルの「改変」の二文字が気にかかる。
もともとゲーム「刀剣乱舞」は、歴史の改変を目論む歴史修正主義者に対抗して、名刀の付喪神である刀剣男士が過去に送り込まれて戦うという設定である。つまり、このコロナ禍そのものを当初企画されていた舞台への「改変」とみなし、それをほのめかすような物事が脚本に盛り込まれるのでは、と想像もできる。
科白劇上演のお知らせとともに、もともとの「綺伝 いくさ世の徒花」は、「事態が終息したのち、改めてお届けできるよう努めて参ります」というメッセージも発表されている。
初演から5年目、8作目では初の女性キャスト、七海ひろきさん(細川ガラシャ役)を起用する新しい試みも打ち出した刀ステに降りかかったコロナ禍であるが、5年間続けてきたダイナミックで美しい舞台も届けたいとのスタッフの意気込みもうかがえる。
刀ステなどの2.5次元舞台はうなぎ上りの勢いで市場を拡大し続け、2018年には既に市場規模は200億円を超えたと報じられている。新型コロナ感染防止策に配慮した科白劇の上演も、厳しい状況が続く中でも舞台エンタメの灯を絶やさないための刀ステ制作陣の意志のあらわれと受け止めたい。舞台は6月2日時点で、7月16日~8月2日に東京・品川プリンスホテル ステラボール、8月4日~9日に東京・日本青年館ホールで上演予定である。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)