大きな狙いとみられる「フィンテック」
事業が多岐にわたるのはソニーの強みでもあり、弱みでもあった。事業間のシナジーが乏しく、複合企業にありがちな割安の株価(コングロマリット・ディスカウント)、つまり低評価だというのがサード・ポイントの主張だ。ソニーは、改めて要求を退け、多様性を維持していくことを鮮明にした。
吉田社長は5月19日にオンラインで経営方針説明会を開催。先々代の最高経営責任者(CEO)、ハワード・ストリンガー氏時代の2007年に「非中核事業」として上場子会社にした金融を、改めて「コア(中核)事業」と位置づけ、祖業であるエレクトロニクスはもちろん、エンタメなど他の事業との連携を強化する考えを示した。
具体的に、大きな狙いとみられるのが、「フィンテック」、つまり金融とITの融合だ。スマートフォンの普及をベースにキャッシュレス決済などのサービスは拡大の一途で、人工知能(AI)やブロックチェーン(分散台帳)などの先端技術の進化も加速している。米アップル、中国のアリババ集団などはスマホ決済などで収集した個人データを与信や融資などの金融事業に活用する動きが強まり、SFHにエレクトロニクスなどの技術をいかに活用していくかが、ソニーの今後の成長に大きな影響を与える。ソニーが誇る非接触型ICチップ「フェリカ」の戦略的な活用も重要なポイントになる。
ソニー生命を中心とする生損保では、AIを活用した自動車保険の新商品開発にすでに取り組んでいるほか、顧客データの分析などを通じた新コンサルティング力をアップする。