原発で使用済みの核燃料からプルトニウムなどを取り出す日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)について、原子力規制委員会が、安全審査で「合格」の判断を示した。「核燃料サイクル政策」の中核施設にゴーサインが出たとはいえ、稼働までには安全対策工事を完了させたうえで、地元自治体の同意も必要で、目標通りに進む保証はなく、核燃サイクルの見通しは立たないのが実情だ。
規制委は2020年5月13日、再処理工場の安全対策の基本方針が、新規制基準に適合すると認める審査書案を了承した。1カ月の意見公募などを経て秋に正式に審査書を決定する。
再処理工場は、全国の原発で出る使用済み核燃料(棒状)を切断して硝酸で溶かし、再利用できるプルトニウムとウランを回収する施設。残った高レベルの放射性廃液はガラスで固め「核のゴミ」となる。
完成予定は24回も延期
同工場は1993年に工事が始まったが、相次ぐトラブルにより、当初の1997年完成予定は24回も延期され、現在は2021年度を予定している。
経済産業省の旧原子力安全・保安院の使用前検査を控え試験的に運転していた2007~08年、トラブルを何度も起こし、原因調査などを進めていたところに11年3月、東日本大震災により東京電力福島第1原発事故が発生。これを受け、規制委が発足し、新規制基準が施行されたため、14年1月に新たな基準に即して審査を申請していた。
日本原燃は当初、地震の想定される最大の揺れ(基準地震動)を600ガル(ガルは加速度の単位)、青森・秋田県境にある十和田火山の噴火で火山灰が30センチ降り積もると想定したが、審査の結果、敷地内の活断層の長さを1キロ長いと変更して基準地震動は700ガルに、火山灰は青森県・八甲田山の噴火も考慮に入れ55センチに、それぞれ見直して対策を打つことにした。
だが、再処理工場が稼働に至る道のりはなお遠い。まず、再処理工場は本邦初だけに、工事がスンナリ進むかは疑問だ。通常の原発なら審査に通ることで稼働への手続きはヤマを越すと判断できるが、再処理工場は工事や安全審査は難航しそうだ。