1994年12月4日、薬師寺保栄VS辰吉丈一郎 「世紀の一戦」実現の背景は...

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   ボクシングの元WBC世界バンタム級王者・辰吉丈一郎が今なお現役にこだわり続けている。2020年5月15日に50歳の誕生日を迎えたが、現在もジムワークを欠かしていないという。「世界王者で引退」は50歳になってもブレることはない。

   デビューから8戦目での世界王座奪取、そして2度の王座返り咲き。数々の伝説を残してきたなかで薬師寺保栄(当時・松田ジム)との王座統一戦は今でも「世紀の一戦」として語り草となっている。

  • 1994年12月4日、名古屋市総合体育館レインボーホールで繰り広げられた「世紀の一戦」(写真:アフロ)
    1994年12月4日、名古屋市総合体育館レインボーホールで繰り広げられた「世紀の一戦」(写真:アフロ)
  • 1994年12月4日、名古屋市総合体育館レインボーホールで繰り広げられた「世紀の一戦」(写真:アフロ)

興行権の入札にドン・キング氏が「参戦」

   1994年12月4日、名古屋市総合体育館レインボーホールに9800人の観客が詰めかけた。リングの上には2人の世界王者が立っていた。WBC世界バンタム級王者・薬師寺とWBC世界バンタム級暫定王者・辰吉(当時・大阪帝拳)だ。日本人同士による初の世界王座統一戦は、薬師寺の地元である名古屋開催にもかかわらず、会場には多くの辰吉ファンが大阪から訪れ辰吉を後押しした。

   「世紀の一戦」は両者がリングに上がる前からすでに「戦い」は始まっていた。この試合の興行権を巡る争いだ。争点となったのは、試合の開催地とTV中継するテレビ局。薬師寺陣営は地元名古屋、辰吉陣営は大阪もしくは東京での開催を主張。テレビ局に関しては、薬師寺陣営はTBS系列、辰吉陣営は日本テレビ系列がバックについており、どちらも譲ることがないまま平行線をたどった。

   両陣営の交渉がまとまらず、WBCによる興行権の入札が行われた。メキシコのWBC本部で行われた入札には、当事者の両陣営の他に世界的なプロモーター、ドン・キング氏が参加。薬師寺、辰吉とはまったく関係のないドン・キング氏のまさかの「参戦」は日本のボクシング関係者を驚かせ、入札額の高騰が心配された。一方でこの試合の注目度の高さを物語るエピソードのひとつである。

   注目された入札は、薬師寺陣営が342万ドルで落札した。当時のレートで約3億4200万円だった。対する辰吉陣営は約2億3800万円、ドン・キング氏は約3億2000万円。薬師寺陣営が約2200万円の差でドン・キング氏を上回ったわけだが、あやうく興行権がドン・キング氏の手にわたるところだった。結果、薬師寺陣営が興行権を落札したことで、試合会場は名古屋となり、TBS系列でTV中継されることが決まった。

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