「レナウンが経営破綻した」と聞いてなにがしかの感慨を持つのは、おそらく50歳代より上の世代だろう。より若い世代に親しまれていない現実こそが、大手アパレルにとっては致命的だったといえる。
東証1部上場のレナウンが東京地裁に民事再生法の適用を申請し、手続開始決定と管理命令を受けたのは2020年5月15日。開示文書には、負債総額が約138億円(3月31日現在)であり、「新型コロナウイルスの感染拡大により、著しい販売減少をきたした」と記されていた。今後は希望退職者を募りつつ、スポンサーを探す予定だ。
「ワンサカ娘」で一世を風靡
百貨店を主力の販路とするレナウンにとって、感染拡大で百貨店の営業自粛の動きが3月以降に広がり、4月には政府が緊急事態宣言を発令したことで全国の百貨店やショッピングモールのほとんどが休業を余儀なくされ、春夏物の商品の販売がストップしたのは確かに誤算だった。それでも感染拡大は最後の一押しに過ぎなかったのだ。
レナウンは1902年に佐々木八十八によって大阪で繊維卸売業「佐々木営業部」として創業され、メリヤスを中心とした繊維商品を製造した。1923年には商標に「レナウン」を採用。前年に来日した英国皇太子(後のエドワード8世、ウィンザー公)が乗船していた巡洋艦が「RENOWN号」であり、その「名声」「栄光」といった意味にあやかった。一世を風靡したのは1960年代からで、女性向けアパレルとして宣伝広告を積極的に展開し、サビで「レナウン」を連呼するCMソングの「ワンサカ娘」(作詞作曲・小林亜星)はブランドとしてのレナウンを日本に定着させた。
しかし、1990年代のバブル経済崩壊に加え、主力販路である百貨店の斜陽化が進んだり、安い海外ブランドを消費者が手に入れやすくなったりした結果、業績が下降傾向に。アーノルドパーマータイムレスなどの基幹ブランドは若い世代を取り込めず、さらにファーストリテイリングが展開する「ユニクロ」の登場は、日本人のファッションに対する考え方を徐々に変え、かつて誇ったレナウンのブランド力を侵食していった。
中国企業傘下となるも、相乗効果は発揮できず
2004年には紳士アパレル大手のダーバンと経営統合したが業績は好転せず、10年からは中国繊維大手の山東如意科技集団有限公司が筆頭株主となり、山東如意グループ傘下で中国における販売展開に浮上を託した。しかし、相乗効果は期待したほど発揮できず、売上高は減少が続き、純損益は2期連続の赤字を計上していた。
20年3月に開かれたレナウンの定時株主総会では、山東如意の動議によって19年5月に就いたばかりの社長と会長の続投が否決される異例の事態も起きた。急遽、取締役上席執行役員が社長に昇格したが、50%超を保有する筆頭株主とのコミュニケーションもできないほど混乱を極めていたと言えよう。
レナウンは5月15日付で東証の整理銘柄に指定され、6月16日に上場廃止となる見込み。5月28日には、300人規模の希望退職者募集も始まった。今後は管財人の下でスポンサーを探し、グループの事業の維持・再生に取り組んでいくという。