3メガバンク決算とコロナ それぞれの「業績へのダメージ」とは

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   メガバンクの2020年3月期連結決算は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な感染拡大)の影響を受け、純利益が軒並み減益になり、21年3月期もさらに落ち込みを見込むという厳しいものになったが、現在の3メガ体制となって初めて三井住友フィナンシャルグループ(FG)が純利益で初のトップに踊り出て話題になった。ただ、それ以上に新型コロナの影響が今期(21年3月期)の各行の業績に与えるダメージに関心が集まっている。

   2020年3月期の純利益は三井住友が7038億円(前期比3%減)に対し、三菱UFJは5281億円(同39%減)、3位のみずほFGが4485億円(前期の4.6倍)だった。

  • メガバンクにも影響が(写真はイメージ)
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「敵失」による逆転

   三井住友の逆転は「敵失」による面が大きい。三菱UFJはもともと、同期の純利益を9000億円と見込んでおり、悠々トップを維持するはずだった。ところが2019年12月末にインドネシアのバンクダナモン(94%出資)、年明け後にタイのアユタヤ銀行(77%出資)について、株価下落を受け減損処理を実施し、これだけで純利益が約3500億円吹き飛んだ。新型コロナウイルスが加わり、貸し出しに対する引当金の増加や保有株式の減損で純利益はさらに目減りした。減損だけなら2020年1~3月で取り返せるとの腹積もりだったとされるが、新型コロナで計画通りに行かなくなったようだ。

   一方の三井住友はこれまでも経営効率では定評がある。コロナの影響は受けたが、銀行本体の貸出・手数料収入など本業の稼ぎである業務粗利益は、三菱UFJ銀行1兆5462億円、三井住友銀行1兆4120億円と拮抗するが、経費は三菱UFJ銀1兆1509億円(経費率70.2%)、三井住友銀8080億円(同62.8%)。この結果、経費を差し引いた業務純益は三井住友銀が6039億円と、三菱UFJ銀の3952億円を圧倒している。国内の銀行としての比較では貸出金の規模が三菱UFJ銀88兆円、三井住友銀80兆円と大差がなく、経費の差が出ている。

   連結では、海外で現地銀行を傘下に持ち、稼ぎを上げてきた三菱UFJ・FGが強かったが、今回は減損のマイナスで三井住友に利益で抜かれる結果になったということだ。ただ、インドネシアやタイの現地銀行は利益を増やしてきているから、減損は一時的な影響とみてよさそうで、このまま三菱UFJ・FGが後退していくとみるのは早計だ。

「初の首位交代」の話題を吹き飛ばす

   2行に続くみずほFGは、新システムなどで6800億円の巨額減損を計上した2019年3月期からは純利益は大幅増益になったものの、額は4485億円にとどまる。ただ、新システム全面移行(19年)によりコスト削減が進み、20年3月期の経費削減額は580億円程度との見通しから890億円まで上振れしたのが明るい材料といえる。

   史上初の首位交代は、平時であればもっと注目されたはずだが、これを吹き飛ばしたのが新型コロナウイルスだ。各グループの決算発表の会見でも、ほとんどの質問が新型コロナに集中した。

   2021年3月期は融資先の倒産が増えるのに備え、各行とも手厚く貸倒引当金を積んだのがまず目立つ。三菱UFJは4500億円の与信費用を見込んでおり、そのうちの約2000億円がコロナの影響。三井住友は同様に4500億円程度、うちコロナによる影響は2600億円程度としている。みずほも2000億円程度と見込む与信費用の全額が新型コロナの影響。みずほも与信費用2000億円を見込んでいる。

   このほか、世界的な利下げに伴う金利収入の減少、感染拡大防止のための営業活動自粛も減益要因になる。新型コロナによる減益額は、三菱UFJが6000億円、三井住友が3100億円、みずほは800億円と見込んでいる。この結果、同期の純利益は、三菱UFJが5500億円(前期比4%増)と前期の減損による落ち込みの反動で微増を見込むほかは、三井住友が4000億円(同43%減)、みずほは3200億円(同29%減)と大幅減益を予想している。

   ただし、この予想とて、3メガバンクともに、2021年3月期の上期に感染拡大が衰退し、徐々に経済活動が再開されるという前提を置いてのもの。秋以降、感染拡大の第2波、第3波の襲来も懸念され、経済状況が厳しさを増せば、取引先への一段の資金支援が求められ、貸し倒れリスクも高まる可能性がある。

問われる「銀行の真価」

   三菱UFJは2023年度までに三菱UFJ銀行の店舗数を17年度末比で約200店舗減らす方針を示し、三井住友も22年度までに4分の3にあたる300店舗を軽量店に置き換え、みずほも26年度までに16年度末より約1万9000人減らす方針を打ち出し、コストカットにも動く。なにより、08年のリーマン・ショック以降、各行とも自己資本比率を高めるなど財務基盤を強化しており、現状で融資余力は十分と、各メガバンクは口をそろえる。三菱UFJFGの場合、20年3月10日~5月8日に1万件の相談を受け2.5兆円の融資を実行したといい、全国銀行協会によると4月末の貸出金残高の前年同月比の伸び率は4%となり、11年ぶりの高さだった。

   「資金繰り支援をはじめとする金融面のサポートに万全を期す。これが我々の社会的使命だ」(亀沢宏規・三菱UFJFG社長)というように、未曽有の事態の中、銀行の真価が問われる。

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