外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(6)
欧州のコロナ禍、国による違いは何だったのか

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   コロナ禍が欧州に広がる前の2020年1月31日、英国が欧州連合(EU)から離脱し、11か月の移行期間に入った。欧州はいま、どのようにコロナ禍に対応しているのか。「ビッグ3」と呼ばれる英仏独の一角が抜け落ちたあと、EUはどこに向かうのか。EU研究の第一人者、北大公共政策大学院長の遠藤乾さんに話を聞き、仏・独それぞれに長く住むお二人に語っていただいた。

  •                   (マンガ;山井教雄)
                      (マンガ;山井教雄)
  •                   (マンガ;山井教雄)

対応が分かれた欧州

   5月20日、ZOOMでインタビューした遠藤院長は、開口一番、欧州主要国の対応を三つに分けて説明してくれた。

   第一はイタリア、スペインのコロナ禍「先行組」、第二はドイツ、英国などの「後発組」、そしてスウェーデンに代表される「独自路線組」だ。後発組は、比較的対応がしっかりしたドイツと、混乱の末に多くの死者を出した英国が対照的な結果になった。フランスは「先行組」と「後発組」のドイツの中間あたりに位置づけられる、という。

   イタリア、スペインの「先行組」に共通するのは、高齢化が進んでいたことと、大家族を中心とする親密な家族形態を基調にしている点だ。イタリアでは社会投資が脆弱で、スペインではもともと弱い医療体制が、この20年近く、さらに経費を削減されて足腰が弱っていた。

   「この2か国では、感染が特定地域に集中している点でも共通している」という。

   この遠藤院長の言葉を当時の報道で補足しておきたい。

   イタリア政府は3月7日、人口約1千万人のロンバルディア州全域と、北部などの14県を4月3日まで封鎖する措置に踏み切った。ロンバルディア州にはイタリア第2の都市で人口125万人のミラノがあり、ベネチアを含むベネト県も封鎖の対象になった。この封鎖で1600万人が影響を受けた。

   英BBCの3月8日付報道によると、隔離地域では、映画館、体育館、プール、美術館、スキー場、ナイトクラブなどが閉鎖された。レストランやカフェは午前6時から午後6時まで営業できるが、客は少なくとも互いに1メートル離れて座らなくてはならない。隔離中は結婚式や葬式も、開くことができず、宗教や文化イベントも中止になった。住民はできる限り家に留まり、不要不急の外出を控えるよう求められた。

   隔離措置に違反した場合は、最長3か月の禁錮刑など、罰則も示された。イタリアではそれまで、北部の一部自治体で住民5万人が隔離の対象になり、4日には、5日からすべての学校を10日間閉鎖すると発表していた。感染の爆発で、一気に広域を封鎖するという強硬策に転じたことになる。

   3月22日にイタリアの死者は3456人になり、最初に感染が確認された中国・湖北省の死者数を上回った。ロイター通信の3月25日報道によれば、ロンバルディア州の死者は21日の週に他地域の倍近く増え、24日には全国の61%にあたる4178人になり、感染者も全国の44%に上った。同州4番目の都市ベルガモは全国の高齢者人口が国内最多で、土曜日の同21日には地元紙の訃報欄が12ページにもなったという。

   実際には、感染が確認されないまま亡くなって人もいるので、正確な死者数は今もってわからない。だが、「特定地域に集中」という偏りがあったことは、これらの報道でもうかがえるだろう。

   英BBCの3月15日付報道によると、スペインでもペドロ・サンチェス首相が3月14日、全土に非常事態を宣言した。日常欠かせない物資と薬品の買い物、仕事が目的の場合を除いて、市民が自宅から外出するのを禁止した。飲食店などは休業となり、映画館や劇場、スポーツ施設なども休館になった。

   スペインでは、バルセロナを含むカタルーニャ地方の町や首都マドリードなどで感染が拡大していた。緊急事態宣言が出される直前の3月12日付ロイター通信は「医療対応の限界迫る」として、次のように伝えた。「保険緊急管理調整局のフェルナンド・シモン局長はマドリードの感染者が当初の782人から1024人に拡大したと指摘。全土の死者47人のうち31人が首都に集中していることについて、『マドリードでの致死率が高いのは、高齢者福祉施設での感染が相次いでいるため』と説明した」。マドリードとカタルーニャ自治州は、5月下旬の段階でも死者数の約半数を占めていて、特定地域への集中をうかがわせる。

姉妹サイト