「米国史上最大の政治犯罪」とトランプ大統領が声高に叫んでいる「オバマゲート(OBAMAGATE)」-。
「オバマゲートに比べたらウォーターゲートは、小さなポテトみたいなもの(取るに足らない)=OBAMAGATE MAKES WATERGATE LOOK LIKE SMALL POTATOES!」
トランプ氏は2020年5月27日にも、ツイッターで、すべて大文字でこうつぶやき、共和党寄りの「FOXニュース」も連日のように、「オバマゲート」について報道している。
だが、日本のマスメディアでは、ほとんど取り上げられていない。いまだ真偽が定かでないまま、米国では報道が過熱する「オバマゲート」とは一体、何なのか。
「大統領選ロシア関与説」はオバマ政権が仕組んだ?
「オバマゲート」は、「ウォーターゲート」をもじった造語で、日本語でいえば「オバマ疑惑」だ。「ウォーターゲート」は1972年の米大統領選挙戦のさなかに、民主党本部のあった「ウォーターゲート・ビル」に盗聴器が仕掛けられようとしたことから始まった事件である。共和党のリチャード・ニクソン大統領政権幹部がこれに関与し、もみ消し工作、司法妨害、証拠隠滅などを行ったとし、ニクソン大統領は1974年に辞任に追い込まれた。
「オバマ疑惑」は、「ロシア疑惑」と大きな関係がある。「ロシア疑惑」は、「トランプ氏の共和党陣営がロシア政府の協力を得て、2016年の米大統領選を優位に進めた」と民主党が追及してきた疑惑のことだ。
これまでの捜査では、ロシア当局とトランプ陣営による共謀を立証するには、証拠は不十分であるとされてきた。
じつは、2016年の大統領選で民主党のヒラリー・クリントン候補を当選させるために、トランプ氏就任後は彼を引きずり下ろすために、国家権力を悪用し、それを裏で操っていたのがオバマ前政権だったとの疑惑が、「オバマ疑惑」だ。そして、「ロシア疑惑」を仕組んだのも、オバマ前政権だったというのが、トランプ擁護派やFOXニュースの主張なのだ。
この問題に大きく関わっているのが、マイケル・フリン氏だ。2016年11月にトランプ氏が大統領選挙で当選した直後の12月、トランプ氏から大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に指名されたフリン氏が、セルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使と電話会談したことだった。フリン氏は大統領選で、トランプ氏の外交顧問として活動していた。
16年の大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、政権末期のオバマ政権はロシアが選挙戦に介入したとして、ロシア政府に対する制裁発動に踏み切った。フリン氏はこの制裁について、ロシア大使と協議していたといわれる。
フリン氏はもともと民主党支持者で、オバマ政権では国防情報局長官だったが、イスラム国(IS)との戦いなどに関して政権内で激しく意見が対立し、解任されている。その後、2016年大統領選で、フリン氏はトランプ氏の熱心な支持者となった。
オバマ氏は大統領就任が決まったトランプ氏に、「新政権でフリン氏を起用すべきではない」と忠告していた。トランプ擁護派の間では、「フリン氏がオバマ政権について熟知しているため、トランプ政権に入るのを恐れたのではないか」との声がある。