東海道新幹線を運行するJR東海が、ツイッター上で新幹線を利用する上でのお願いを、2020年5月26日から呼びかけている。
マスク着用や、乗客同士の距離の確保に加えて、「座席の回転」を控えることも呼びかけられていた。対面座席に座っての鉄道旅行は消滅のピンチなのだろうか。
「新しい生活様式」は食事も「横並び」
座席を回転させてグループ客で楽しみながら旅行する――新幹線なども含め、これまで当たり前のように見られてきた光景だ。
鉄道の座席には通勤電車で一般的なロングシート、新幹線などに使われる進行方向に向けて並ぶクロスシートとともに、4人1組で座席がボックス状になるボックスシートというスタイルもある。中距離を走る近郊型電車などに長年用いられてきた。
グループ旅行を想定して、ボックス席を配置した列車も運行されていた。西武「52席の至福」JR東日本「越乃Shu*Kura」JR四国「伊予灘ものがたり」などであるし、定期運転の列車にも、近鉄「しまかぜ」JR東日本「サフィール踊り子」などではグループ向けの個室を持っている。
近年ではクロスシートの向きを自由に転換(回転)してボックス型にもできる転換クロスシート、回転クロスシートも定着している。東海道新幹線もこのタイプだ。
ところが新型コロナウイルスが流行し始めると、至近距離での会話は感染リスクにつながるとして忌避する動きが強まった。「新しい生活様式」では、食事も「対面ではなく横並びで座ろう」とされている。JR東海の呼びかけもこの一環だろう。
「飛行機のような」スタイルが定着?
旅行解禁のムードが高まっても、しばらくは新型コロナへの恐怖感が世の中に残るだろう。そうなると鉄道旅行のスタイルはどうなるか。
「ビジネスマンでも出張帰りに座席をボックス席にして『お疲れ様』の一杯を上げたりもできましたが、これからは飛行機のような、静かな旅行スタイルにとって代わられるかもしれません」と鉄道ライターの新田浩之さんは話す。
「(ボックスシートは)国鉄時代からの伝統的なスタイルではありますが...刻一刻とコロナ情勢は変わるので読めないですね」
鉄道の旅行スタイルも変わってしまうのか、時と共にコロナウイルスの脅威が克服されて需要が復活するのか、社会はどちらを選ぶだろうか。