中国の全国人民代表大会(全人代、日本の国会にあたる)が2020年5月28日、香港に国家安全法制を導入する方針を採択した。共産党政権に対する批判的な活動を厳しく取り締まる目的で、今後具体的な立法作業に入る。
採択を受け、日本国内でも懸念の声が相次いだ。菅義偉官房長官が会見で言及したほか、日本共産党など野党からも反応があった。
菅長官「深く憂慮」
菅長官は28日午後の会見で、全人代での「採択」に関する質問を受け、「国際社会や香港市民が強く懸念するなかで(採択が)なされたこと、及びそれに関連する香港情勢を深く憂慮しております」と述べた。香港では、同法制の制定に向けた動きに反発する市民らによるデモが行われ多数の逮捕者も出ている。
菅長官はさらに、「香港は我が国にとって緊密な経済関係と人的交流を有するきわめて重要なパートナーであり、1国2制度のもと、従来の自由で開かれた体制が維持され、民主的、安定的に発展していくことが重要であると考えます」との認識を示し、中国に対しては「主張すべきは主張していきたい」とした。
また、野党第一党の立憲民主党の公式ツイッターは、採択を報じる共同通信記事を紹介しつつ、「私たちは、香港市民が自由と法治を求めている声に寄り添い、国際社会とともに、香港の民主的で高い自治の確保が実現されるよう、強く求めていきます」と発信した。
この他では日本共産党が公式サイトで、志位和夫委員長名のコメントを公表した。「香港への『国家安全法』導入に強く抗議する」のタイトルで、750字を超える分量だ。「中国の国際公約である『一国二制度』を有名無実化するものである。コロナ禍のもと、市民が抗議しづらい状況下でこの決定が行われたことも重大である」と指摘し、今回の採択に対し「強く抗議」している。