高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
2次補正予算「真水」の中身 GDP有効需要に直結するのは...

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   27日(2020年5月)に閣議決定された2次補正予算では、売り上げが減少した業者への家賃負担やひとり親世帯への支援などを盛り込み、事業規模は1次補正と合計で200兆円を超えるとしている。肝心の「真水」はどの程度なのか。

  • 2次補正予算が閣議決定された
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「真水」にきちんとした定義はない

   一般会計歳出規模は、31.9兆円で、財源は国債発行だ。建設国債9.3兆円、特例国債22.6兆円だ。中身を見ると、

(1)雇用調整助成金の日額上限を8330円から1万5000円への引上げにより0.5兆円
(2)企業の財務基盤の強化に向けた融資、出資などの資金枠で11.6兆円(中小企業向け融資8.8兆円、中堅大企業向け融資0.5兆円、資本性資金2.4兆円)
(3)家賃支援給付金創設について、一定の条件で中小・中堅が月額50万円、個人事業主は25万円という上限で最大300万円給付などで2兆円
(4)医療体制強化で3.0兆円(医療従事者や介護施設の職員に対し、1人あたり最大20万円の慰労金を支給等)

   これらの他に、

(5)地方自治体の財政を支援するために設けた「地方創生臨時交付金」増額で2.0兆円
(6)持続化給付金の対応強化で1.9兆円
(7)新型コロナウイルス対策の予備費の積み増し10.0兆円等

となっている。

   いわゆる「真水」であるが、きちんとした定義はない。日経新聞では、公共事業費、予備費、給付金、減税措置などを「真水」とし、今回の2次補正で33兆円としている。

   筆者は、真水をGDPの有効需要に直結するものと見ているので、企業への融資・出資や予備費はどうかと思う。出資は企業の資本勘定になり負債勘定の単なる貸付でないが、もらい切りの補助金とは違う。国からみれば、出資も貸付もともに国債発行対象経費であるので、国債発行を財源とするが、補助金とは異なり、金融取引で有効需要を直ちに増大させるという意味での「真水」とはいえない。

   さらに、予備費10.0兆円も、まだ有効需要になっていない。そう考えると、歳出規模31.9兆円から、資金繰り対策11.6兆円と予備費10.0兆円を差し引いた10兆円程度が真水と考えたほうがいいだろう。ただし、企業への有効な資金供給は、雇用を確保するのには一定の役割を果たすだろう。

GDP落ち込みを前に、手当を打つべき

   今の段階で、国会の会期末について、東京都知事選が6月18日告示、7月5日投開票なのでその関係で、今国会の延長は難しい。

   さらに、景気の落ち込みは既に多くの人が体感しているが、統計数字としては1-3月GDP一次速報が▲3.4%(年率)と5月18日に公表されたばかりで、▲20%(年率)より悪い数字が予想される4-6月期GDP一次速報は、8月17日の予定だ。昨年10-12月期からの累積で▲30~40%程度になろう。

   本来であれば、こうした予想はかなりわかっていることなので、今国会でそのための手当を打っておくべきだ。そうした意味で、筆者がかねてより主張していた50兆円以上の規模の基金創設を今国会でやるべきだと思っている。ただし、予備費10兆円は、基金を作るのと同じなので、その点は評価できる。

   どの程度、GDPが落ち込むか、それに対してどの程度有効需要を補正予算でつけられるかが、今後の雇用確保において重要だ。1次と2次補正では力不足だ。戦前の大恐慌並みの経済ショックなので、補正予算は3次でも4次も惜しんではいけない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「韓国、ウソの代償」(扶桑社)、「ファクトに基づき、普遍を見出す 世界の正しい捉え方」(KADOKAWA)など。


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