東京都知事選(2020年6月18日告示、7月5日投開票)では、現職の小池百合子氏(67)の再選出馬が確実視されるなか、野党統一候補の擁立のあり方も焦点だ。
すでに出馬を表明している、元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏(73)は16年の都知事選で、旧民進党が野党統一候補として擁立を進めた鳥越俊太郎氏(80)に譲る形で、告示の1日前に立候補を断念した経緯がある。宇都宮氏は20年5月27日に東京都庁で開いた記者会見で「今回は、どういう候補が出てきても、降りるつもりはない」と断言した。だが、立憲民主党をはじめとする野党は、宇都宮氏の支援の是非を含めて、方針を固めきれていない。
「都政について、都民について全く関心がない人を担いでどうするんですか!」
宇都宮氏は記者会見で16年の出馬断念について
「選対のメンバーとも話して、苦渋の決断をしたことがあるが、今回はそういうことはしてはならないと思っている」
と説明。「地味」だという記者の指摘には、
「あんまり克服しようとしても、できないと思う。私は、今のままでいいんじゃないかと思っている」
と応じた。その理由として挙げたのが16年の野党統一候補の人選だ。いわく、「『名前が売れてて、勝てそうな候補で』ということを中心に野党候補は選ばれましたよね?」。
鳥越氏は出馬会見で「知りません」を連発し、対立候補の公約も「関心がなかったから」読んでいないことを明言するなど、都政に対する知見のなさを露呈していた。宇都宮氏はこういった経緯を念頭に、
「あのとき鳥越さんは何と言ったかというと、『都政についてはこれから考えます』ということ。都知事選というのは、都民の政策をどうするかということがかかっている、そういう選挙だ。都政について、都民について全く関心がない人を担いでどうするんですか!」
などと語気を強めながら、鳥越氏を擁立した野党側を非難した。12年、14年の都知事選で共産党の支援を受けて出馬した宇都宮氏だが、今回の会見では。
「私が立候補(表明)するまでに政党との関係はないし、今まで政党に支援要請はしていない。これから応援したいという人が出てくれば、大変歓迎しますけどね」
と説明した。都知事選では、福祉を重視するなど政策面で近いとされる、れいわ新選組の山本太郎代表が出馬する可能性も指摘される。宇都宮氏は、仮に山本氏が出馬した際の対応についても、
「今回は、どういう候補が出てきても降りるつもりはない」
「それ(山本氏が出馬しても立候補を断念しないこと)は、もう当然。(宇都宮氏以外の候補者で)野党共闘ができても、降りないわけだから」
などと繰り返した。
「まだニュートラルな状況」だが「候補者は立てるべき」
16年に鳥越氏の擁立を進めた旧民進系の2党は、目立った動きを見せていない。立憲民主党の福山哲郎幹事長は5月26日の定例会見で、宇都宮氏の出馬について「私が今論評することは控えたい」。宇都宮氏を野党統一候補として位置づけるかどうかを含めた対応方針については、「協議がさらに加速することは間違いないと思う」としながらも、「まだニュートラルな状況」だとした。ただ、小池氏への対抗馬を立てないままの「不戦敗」は避けたい考えだ。
「今のところ、私は候補者は立てるべきであると思っている。単独で、かどうかは別。そういう『立てるべきだと思っている』ということが、私の今の、その(小池都政の評価を問う)質問に対する答えだ」
一方、国民民主党の玉木雄一郎代表は、独自候補の擁立は現実的ではないとの立場で、5月27日の定例会見で、福山氏の発言を念頭に
「野党第1党さん(立憲)がどういう選択をされるのか、どういう協力を他党に働きかけるのか、そういったところをよく見ていきたい。宇都宮健児さんが出られたので、例えば共産党さんの一部は、そこを応援されるということであれば、(宇都宮氏と)別に(候補者が)出れば、野党統一というのは、そもそも崩れている。いずれにしても、よくこれから考えていきたい」
などと発言。野党統一候補の実現は困難だとの見方を示唆した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)