「第2波」「第3波」への懸念
ただ、例えば米国工場では、メキシコがコロナ対策で工場の稼働を認めていないため、部品供給に懸念が残る。欧州でもフランス、ポーランドなどの域内の工場を順次再開しているが、「3密」を回避するため一度に働く人数を絞るなど、まだ手探り状態で、フル稼働には程遠い。
さらに、秋以降に予想される感染拡大の「第2波」「第3波」の度合いによって、計画通り生産・販売が回復しない可能性がある。
こうした厳しい状況でも、研究開発費を減らさない。自動車業界は「100年の1度の変革期」といわれ、「コネクティッド(接続)化」「自動運転化」「電動化」「シェア・サービス化」を巡って世界のIT大手の参入などで新技術開発への投資競争が激しさを増している。例えば電気自動車(EV)では米テスラが先行している。また、完全自動運転で送迎するライドシェアサービスを2018年末に始めた「ウェイモ」はグーグルの傘下で、同社の研究開発費は年間2兆円規模。「企業の体力によって開発力の差が広がる」(大手紙経済部デスク)とあって、業界の垣根を超えた競争激化の中、自動車業界の雄であるトヨタといえども安閑とはしていられないということだ。
決算を受けた東京株式市場の反応は微妙だ。発表は5月12日の取引時間中で、トヨタ株の終値は前日比131円安、翌13日は143円安、14日も129円安とジリジリ下げ、その後は一進一退の展開だ。発表前の2021年3月期の営業利益に関する市場予想の平均は1兆7000億円で、これを大幅に下回る発表で、失望を買ったのは確かだが、業績見通しを明らかにしない会社が多い中で、営業利益だけでも発表し、「基準を示すことで関係会社が何かしらの計画や準備ができると考えた」(豊田社長)という姿勢が評価され、株価が踏みとどまったとの見方がある。開発投資の維持も評価されている。
ただ、それでもコロナウイルスの感染終息・再拡大の行方が見えない中、「見通しはやや楽観的過ぎるのでは」(アナリスト)との指摘もあり、株価は神経質な展開が続きそうだ。