福岡市の推計人口が、初めて160万人を突破した。政令指定都市で160万人を超えるのは横浜、大阪、名古屋、札幌に続いて5都市目。この5都市のうち、前年同月比では増加数、伸び率ともに福岡が最も高い。
人口が増えている主な理由は、転入が転出を上回る「社会増」。中心部の天神地区では、ビル30棟を建て替えて店舗やオフィスの面積を増やす「天神ビッグバン」構想が進行中だ。完了すれば企業誘致が進んで雇用も増えるとみられ、一極集中がさらに加速しそうだ。
首都圏には人口流出、その3倍以上を九州・沖縄から引き寄せる
福岡市の人口は、政令指定都市になった3年後の1975年に100万人を突破。山陽新幹線が博多駅まで開通した年でもある。150万人を突破したのは2013年。20年5月1日現在の人口は160万1755人で、平均すると7~8年に10万人のペースで増加している。
福岡市は東京都心などに比べ、通勤時間が短く家賃も安いことに加え、総生産のうち約9割がサービス業などのいわゆる第3次産業だという点も大きな特徴だ。オフィスや商業の集積が人口増につながっている。19年版の「福岡市統計書」によると、市外からの転入から市外への転出を差し引いた19年の転入超過は1万4397人だった。
この統計では、日本人の地域別の転入・転出数も集計している。全体としては9670人の転入超過だが、地域別に見ると転出の方が多い地域もある。関東と東海がそれで、それぞれ3231人、13人の転出超過だ。
一方の転入超過は九州・沖縄からが最も多く、1万1140人。中国(1324人)、四国(320人)、東北(134人)、北海道(123人)、北陸甲信越(58人)、近畿(54人)と続く。なお、中国からの転入超過のうち、700人を福岡県の隣の山口県が占めている。さらに九州・沖縄からの転入超過の内訳を見ると、福岡県(2856人)、長崎県(2435人)、熊本県(1475人)、鹿児島県(1149人)、佐賀県(1094人)、宮崎県(871人)、沖縄県(213人)の順に多かった。
北九州・久留米から引っ越す動きも
つまり、福岡市からはある程度の人口が首都圏に流出する一方で、その3倍以上の数が九州・沖縄各地から、とりわけ福岡市以外の福岡県内から流入していることになる。なお、福岡県内を見ると、福岡市のベッドダウンにあたる「福岡都市圏」(筑紫地域、糟屋地域、宗像地域、糸島市)は882人の「転出超過」。福岡市から郊外のベッドタウンに引っ越す人がいる一方で、北九州市や久留米市から引っ越してくる人が多いとみられる。
天神のランドマーク的存在だった福岡ビル(福ビル)は19年3月に閉館。20年春にはファッションビルの天神ビブレ、隣接する天神コアも閉館した。福岡市が24年末まで10年間かけて進める「天神ビッグバン」計画では、天神地区のビル30棟の建て替えを誘導し、延べ床面積を1.7倍、雇用者数を2.4倍に増やしたい考えで、当分は人口増加が続きそうだ。
福岡市が12年に10年ぶりにまとめた推計では、人口は今後約20年にわたって増え続け、28年に160万人を突破。35年の160万6000人をピークにゆるやかに減少し、40年には160万1000人になると予測している。実際は、この予測よりもハイペースで人口が増え、8年早く160万人に達した。
一方、国立社会保障・人口問題研究所の18年の推計では、20年の人口を160万759人と予測。35年の167万7404人をピークに、40年に167万1888人、45年に165万4572人と、ゆるやかに減少するとみている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)