新聞記者らとの賭けマージャン問題で辞職した東京高検の黒川弘務検事長について、「処分が軽すぎる」などと政府への疑問や批判がネット上で噴出している。
安倍晋三首相は、「責任は私にある」と説明したが、責任の取り方などは示さないままだ。世論が落ち着くのを待って、このまま乗り切るつもりなのだろうか。
訓告処分は、ヤフー調査で9割以上が「納得できない」
「身内に大甘すぎる。日本は法治国家じゃなくなった」「退職金が出るということですね。本当にあり得ない」「感覚が国民と違い過ぎる」...
黒川検事長について、森雅子法相が2020年5月21日、懲戒ではなく訓告処分にしたと発表したことが報じられると、ニュースサイトのコメント欄などでは、こんな声が多くの支持を集めた。
失望の声は多く、ヤフーニュースの「みんなの意見」で、今回の処分について22日からアンケートを始めたところ、同日19時までに8万件以上もの意見が寄せられ、「納得できない」との回答が94%にも達している。
コメント欄などでは、新しい政治を期待して、「今の知事さん達で新しい政党を作り選挙に出れば?」「もう総理大臣も直接国民で投票させてください」といった意見にも支持が多くなっている。
安倍晋三首相は、22日の衆院厚生労働委員会で、黒川検事長の定年延長への自らの責任を認めて、「批判は真摯に受け止めたい」と述べた。しかし、訓告処分については、「稲田伸夫検事総長が事案の内容、諸般の事情を考慮し処分を行った」とあくまで検察側の判断だとした。
菅義偉官房長官も同日の会見で、法務省がすでに賭けマージャンについて調査したとして、再調査は不要との認識を示した。森法相は会見で、進退伺いを出したと明かしたが、安倍首相に慰留されて続投すると説明した。つまり、政府は、これで解決済みだと言いたいようだ。
有馬晴海氏「森雅子法相の進退伺いで決着したと思っているはず」
安倍政権への疑問や批判が多くなってきているが、政治評論家の有馬晴海さんは、政権への影響についてこうみる。
「本来ならすごいダメージになると思いますが、モリカケから始まって桜を見る会の問題まで色々とあり、大臣も7人が辞任していますが、安倍さんは責任を取ったことがありません。今回も、森雅子大臣が辞意表明して取り下げたことで決着したと思っているのでしょうね」
今国会についても、大きな動きはないのではないかと言う。
「野党も、黒川問題だけ言えば、点数稼ぎだと批判を受けます。新型コロナウイルス対策を優先しないといけないので、攻めきれないはずです。政府も、この問題があるので、6月の会期末で終わって、延長しないでしょう。菅官房長官との仲の悪さを指摘する向きもありますが、冷遇すれば逆効果になりかねないので今の関係は保つと思いますよ」
実は、検察庁法改正案の今国会成立を見送ったのは、賭けマージャンについて週刊文春が報道するのを知ったからではないかと有馬さんは推測する。
「報道の時期から見て、黒川検事長に文春から連絡があって、それを知った政府が報道の出る前に法案を取り下げたとも考えられます。芸能人を始めとしたネット批判など世論の高まりが理由ではなかったわけです。法案は取り下げないと言っているようですが、いずれ廃案になる可能性が大きいでしょう。黒川問題という批判の対象がなくなって、安倍政権はむしろ身軽になったとも言えますね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)